手を出す覚悟と受け入れぬ心

「・・・すみませんでしたね、ティア。先程言ったことにはもうお答えしなくていいですよ」
「え・・・でも、大佐は聞きたいと・・・」
「いえ、不躾な言い方をしてしまったのは私ですから大丈夫です。重ね重ね申し訳ありませんでした」
「・・・っ!」
そこから一転して謝り話をしなくてもいいと言うジェイドにティアは何故と言いそうになるが、その前に心無い事に加えて明らかに話を打ち切る気が見える深々とした頭の下げかたにまた絶句する。
「・・・・・・た、大佐・・・・・・イ、イオン様・・・」
「・・・ティア・・・流石に今は黙っていた方がいいと思います・・・どちらが悪いとは僕には言えませんが、少なくとも今はその方が・・・」
「・・・っ!」
それで頭を上げフイとティアから視線を背けるジェイドの冷めた表情に、どうにか助けをイオンに求めようと弱々しく声を上げるが、イオンですらもが取り成しは出来る状況ではないと首を横に振る姿に愕然としかけ、すぐにアッシュとナタリアに視線を向ける。
「・・・」
「・・・フン、なんだその視線は?別に俺はどっちの味方をするつもりもねぇが、テメェが勝手にその眼鏡の失望を買っただけだろう。自業自得ってやつだ」
「っ、そんな言い方・・・」
「理由も眼鏡はちゃんと言ってただろう、見当違いの事を言ったからとな・・・俺に文句を言うのもそうだが、味方をしろなんてのも筋違いだ。そんな暇があったらテメェの迂闊さについて考えやがれ」
「っ・・・!(私は、間違っていたの・・・!?・・・ただ私があの人達が信じれないとばかり言っていたことが大佐やアッシュばかりじゃなく、イオン様にまで私が正しい訳ではないという気持ちを明確に抱かせた・・・それがこんな状況を・・・!)」
だがナタリアは気まずげに視線を反らしアッシュからは辛辣と言うよりは、突き放されて当然とばかりの言葉を嘲笑付きで向けられティアは呆然と下を向き嫌でも考えてしまう。直接的にジェイド達から否定されたと言える状況で、自分の発言が引き起こしたまずさについてを・・・


















・・・そんな状況でティア達の中で会話が弾む筈もなく、以降はアドリビトムの面々が来るまで沈黙が続いた。それでアドリビトムの面々がその状況についてを訝しむ事になるのだが、ジェイドが出発を切り出した事で質問などの時間を取られる事もなく船でグランコクマを出立した。



「・・・成程、そういうわけでしたか・・・」
「・・・すみません、皆さんにティアの言ったことを聞かせていいものか悩んだんですが・・・あの空気を感じた皆さんが疑問に思うのも無理はないと思いましたので、そのまま口にさせてもらいました・・・」
「いえ、こちらも何が起こったのか分かりましたので構いません」
そして船の中の一室・・・そこでイオンに声をかけて話を聞くことにした面々は経緯を聞き、受け答えを担当していたユージーンを筆頭に気にしてないと首を横に振る。
「それに・・・原因というか、事の発端は我々なのですから謝られるとまたこちらもどうすればいいのか分からなくなります」
「・・・発端、ですか・・・確かにモースが殺されたという事実からこのような事態に発展したとは思いますが、正直僕は今となってはこんな状況に遅かれ早かれなっていたのではないかと感じてしまうんです・・・」
「・・・そう、なのですか?」
そのまま責任は自分達にあると言うユージーンだがイオンから出てきた意外な本音に、これまた意外そうに返す。そういったことを考えそうにないイオンから出てきた言葉なだけに。










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