手を出す覚悟と受け入れぬ心

「・・・何かあいつらまとまって向こうに行っちまったけど、これでいいのか?」
「少なくとも僕はこれでいいと思いますよ。ルークさんの言ったように変に揉めるよりはずっと」
「・・・そう思うしかないってことか」
ルークはその姿を見送りつつも何処と無く不安げな声を漏らし、ヒューバートからの同意にそうだと納得するしかなかった。



「・・・大丈夫か、ナタリア?さっきからあまり元気がないように見えるが・・・」
「・・・すみません、アッシュ・・・」
一方船着き場で船の前に来たティア達だが、謁見の間から変わらないナタリアの様子にアッシュが心配そうに声をかける。
「・・・モースの事について考えてました。本当にあれでよかったのかと・・・」
「っ・・・それは・・・」
「アッシュ・・・貴方はその事についてどう思われたのですか?正直にお答えください・・・」
「・・・・・・俺個人としちゃ、モースを殺すってのは十分に効果的な手段だと思った。奴らがあぁでもしなけりゃモースは厄介な事を平然とやらかしただろうからな・・・」
「・・・そう、ですか・・・」
「っ・・・」
そこからモースの事についてを切り出すナタリアにアッシュは聞かれた事もあり自身の考えを話すのだが、それを話せば苦しむことが予想出来ていたのだろう。ナタリアがまた一層沈む様子を見てアッシュは苦そうな顔で歯を噛む。
「・・・ナタリアもそうなんですね・・・」
「・・・イオン様もまだ、納得はしきれていないようですね」
「・・・はい、それは。それでジェイドはその、どう考えているんですか?彼らがモースを殺した事を・・・」
「そうですね・・・概ねアッシュと同じような物ですが、正直こちらは助かりました・・・イオン様には申し訳ありませんが、これからのダアトというかユリアシティとどう接していいかが多少見えてきましたからね」
「多少見えてきたって・・・このような言い方をしたくはありませんが、モースがいなくなったのなら大丈夫だと言わないんですか・・・?」
「それはまだユリアシティの方々とどうなるか分かりませんからね・・・それより私から見て気になるのはティアです」
「え・・・私、ですか・・・?」
イオンもまたその光景に辛そうに表情を歪めジェイドからの言葉に頷いてから問い返すと、慎重論ながら歓迎の旨を伝えつつティアに話題を振ると当人は話題を振られると思っていなかった為に意外そうに目を瞬かせる。
「えぇ、貴女はモースの部下でしたからね。その貴女の視点からモースを殺されたという事実はどのように映ったのかお聞きしたいのですが、どうですか?」
「・・・私は、モース様を彼らが私達の相談も無しに殺したという事実はどうかと思っています。もしもの場合モース様と対峙しなければならないかもしれないとは思っていましたが、いかにイオン様達の事があっても一言くらい何か言ってくれればよかったのではと・・・」
「私は彼らに対しての文句を聞きたいのではありませんよ、ティア」
「えっ・・・!?」
それで改めて問いの中身を告げられた為にティアは質問に答えていくが、ジェイドが方向性が違うと言ったことに心底から驚きを浮かべる。
「彼らの行動が我々に対して報告のない勝手な物だというのは先程の話でも出てきましたが、そこを掘り返すばかりでモースに対しての考えを貴女から聞いてはいません。それとも貴女の心の中にはもうとっくにモースへの忠誠心というか心残りはないと言うのですか?」
「ちょっ、ジェイド・・・どうしてそんなにティアに追求するんですか?普段の貴方らしくないですよ・・・」
「・・・私らしくない、ですか。失敬、少し冷静さを失っていたようですが・・・それでも言わずにいられなかったのです。見当違いというか認識のズレた事をまた聞かされたので」
「大佐っ・・・!?」
そこから責め立ててるといった勢いで口を開いていく姿を見かねてイオンが慌てて止めに入り、ジェイドはようやく冷静さを取り戻して止まるが明らかな失望がこもった声と目を向けられティアは何故と絶句する。そんな目を向けられる覚えはないとばかりに。






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