戦場に際し開き、詰まる距離

「・・・んで、俺に聞きたいことってなんだよ?」
「いえ、少し気になった事がありまして・・・どうして二人はこのマルクトに来たのですか?」
「は?・・・なんでそう言うことを聞くんだよ?」
「いえ、チーグルが貴方にお仕えするようにってミュウを付けたとの事だと聞いたのですが・・・バチカルにいるはずの貴方がチーグルの森にまで来てそんな出会いがあるなんて、すごい偶然だなって思ったんです。それでどうして来たのかなと思いまして、ここまで・・・」
「っ・・・!」
一段落しルークが何かとジト目を浮かべて聞くと、ここに来たわけを聞きたいと相当な偶然を笑顔付きで喜ぶようイオンが答えたことにティアがそっと息を呑んでいた。
(・・・どうしよう・・・こんな笑顔のイオン様に訳を言うななんて言えない・・・でもルークに任せてたら変なこと言いそうだけれど、かと言って私が話を横取りなんてしたら流石にイオン様に悪いし・・・)
ティアが息を呑んだ理由はファブレ邸に侵入した事実を誤魔化すには難しいと、そう思ったからだ。



・・・尚ティアにはファブレ邸に加え、ヴァンを襲った事に対する後ろめたさは全くない。以前であればヴァンを半分信頼半分疑いつつという状況であったためにヴァンに対してはもしも何もなかったらという考えこそあったが、ハナから黒と知っている為にそんな気持ちは浮かぶはずもない。ファブレに対してはそれこそ後ろめたいなどという気持ちは浮かぶはずもなく、夫人にまた謝ればそれでいいと思う始末だ。

そしてこれは以前から共通して言えることだが、ファブレ邸を襲った理由を言いたくない理由は自分が悪く思われることを避けたいが為だ。ただそれも後になれば自分の考えは間違っていなかったと皆に認めてもらえるようになると今は考えているが、それでもティアからして今は変なことだったり疑わしいことをしているというようなイメージダウンは避けたかったのだ。自分はこう見られたいという自分の中の理想を守るために。



「・・・説明すっとめんどくさいから一言で言うなら事故だよ・・・ま、チーグルの森に行ったのは偶然っちゃ偶然だけどな。ティアが道を間違えたから行ったようなもんだし」
「そうですか・・・」
「・・・ふぅ」
・・・そんな考えを抱いているティアだったが、ルークがめんどくさそうに詳しい説明を嫌がるよう頭をかいて簡単に返し、イオンも納得する姿に息を殺しながらも安心する。
(・・・ま、この時点のティアじゃ詳しい説明をしようとしたら絶対嫌がって声を荒らげるだろうしな。そんなんなったらこっちも一々怒んなきゃおかしいしな)
そんなティアと対照的にめんどくさそうな顔のルークの内心は、ティアとのいさかいを避ける事に成功したと安堵していた。
(でも安心ばかりもしてられない・・・このまま行くとタルタロスは神託の盾に襲われる事になるんだし、やっぱりどうにか皆にはここから離れてもらいたいんだけど・・・・・・仕方ない、説得が成功するかどうかは別にしてもやるだけやらないと後悔しそうだから話に行こう・・・演技とか関係なく、本当に真剣に・・・!)
しかしとアドリビトムの面々の安全を思うと不安に胸を詰まらせたルークは悩んだ末に決意する。今の姿など気にせず説得をしようと。
(・・・でも、流石にティアが一緒にいるとやりにくいな・・・今の俺がいきなり変貌したら正気を疑われるだろうし、説明も出来ないしな・・・よし、ここはどうにかティアと離れよう。じゃないと師匠やガイと会った時にティアに俺の事を話された時、どうなるか分からないし・・・そうと決まったら・・・)
意気揚々・・・といきかけたがすぐにルークはティアの方にそっと視線を向け、後々を考えそこには連れていけないと思い決心して口を開く。







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