手を出す覚悟と受け入れぬ心

「というわけだ。今の状況でモースの事実を知られれば却って最悪の事態を招きかねない・・・不本意ではあるだろうが、黙っていてもらうぞ。導師にもその事は」
「・・・私は分かりましたが、イオンは・・・」
「・・・・・・僕も黙ることを選ばせてもらいます。事実を明らかにすることは簡単だとは思いますが、今となってはそうするべきではないとも思いましたので・・・」
「そうか・・・不満はあるだろうが、聞き入れてくれた事に感謝する」
それでピオニーからナタリアにイオンの二人に対して沈黙を願えば、二人ともに・・・特にイオンが相当不本意な様子ながらも頷くとそっと頭を下げて礼を言う。
「・・・おい。モースを殺したという事だがダアトの様子はどうなってるだとか、バレたとかそういったことはなかったのか?」
そこに次は珍しくアッシュが話題を切り出す、ダアトについてとバレたかどうかと。
「バレたかどうかについては問題ないそうだ。人気の少ない夜の誰もいない時間を狙って慎重に行動をして、誰かに見つかることもなく行動に移せたそうだ。ただあまり長居するのも危険だということに加えそうする理由もないということで、翌日にはすぐにダアトを出たから様子については分からんそうだ」
「・・・フン、モースを殺した割には情けねぇもんだな」
「「「「っ」」」」
ピオニーは手紙の中身から事細かに話を進めるが、その中身に嘲りの声を向けるアッシュにアドリビトムの面々の空気がピリついた物になる。
「やめろ、アッシュ・・・それより今はその結果を受け、どう動くかということが重要だ」
すぐさまピオニーはその空気を変えるべく制止と共に、話題転換をする。これからどうするべきかと。
「と言ってもモースを失ったダアトというか、ユリアシティがどう動くかだが・・・流石にそんな状況で向こうが状況打開の策を簡単に思い付いてくるとは思えん。前に言ったタタル渓谷にザオ遺跡のパッセージリングを操作して魔界に降下させたなら、より一層混乱して何も出来なくなるだろう。後はそこからキムラスカと交渉の席につくようにすればいいかとは思うが・・・今後の事を考えれば、出来るならユリアシティの人々とも関係を作りたいと俺は思っている」
「ユリアシティの人々とも、ですか?」
「あぁ、むしろそう出来なければ俺達にとっての危機はそれこそいつまで経っても去ることはない」
しかし話題を振りつつも方向性は固まっているとユリアシティの名を切り出すピオニーに、クレスを始めてして一同はその話に集中して耳を傾ける。
「ユリアシティの人々がモースのように苛烈で手段を選ばず話を聞かないような人物達だらけだというなら話をするだけ無駄と言えるが、そうでないというなら交渉の余地はあるだろう。そこで聞くがティア・・・ユリアシティの人間はそう言った人物達の集まりなのか?」
「・・・いえ、そんなことはありません。お祖父様を始めとした皆は確かに預言通りになることを望んではいますが、予期せぬ事態が起きている今は兄さんの事も合わせて知ったら話を聞いてくれると私は思っています」
「そうか・・・」
そのようにして話が進む中で自らに話題を振られたティアは淡々と説明をしていき、ピオニーはその中身に考え込むようにそっと目を閉じる。










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