手を出す覚悟と受け入れぬ心

「・・・じゃあ気を取り直して聞くけど、ユーリ達は事が済んだらすぐに戻ってくるのか?」
「はい、それは。長居する理由もありませんし、下手に時間をかければ大詠師の死によるダアトの混乱の影響を受け退散するには少し難しい状況になりかねませんので・・・ただ、今後の事を考えて大詠師を殺したのは我々であるとピオニー陛下にお伝えするように手紙を向こうから送ってもらう手筈となっています」
「!?・・・なんで、モースを殺すことを・・・!?」
ルークはそのまま自身で話を先導し話題を変えるが、そこでフレンから予定している流れを聞かされた事にどうしてなのかと驚愕する。
「まず一つ上げるなら、ダアトが大詠師の死を公表するかしないかのどちらかが分からないことにあります。もし公表するならまだピオニー陛下に事実を伝えずに済んでよかったと言えるかもしれませんが、公表しない・・・つまりは事実の隠匿をされたのなら、モースが死んだという前提で事を進めることに多少の難が出てきます。ピオニー陛下であれば実際に見たと報告すれば信じてもらえるかもしれませんが、信憑性を持たせたいと言うならそちらの方が確実になります」
「・・・じゃあ次はなんなんだ?」
「次は、導師達の反応を伺う為です。と言ってもルーク様なら大方の反応は予想はついているのではありませんか?その報告が来たとなって、我々の判断をどう思うのかというのは」
「・・・それは確かに予想はついてるけど、もしかしてティア達にもモースの事について話すつもりなのか?」
「はい。とは言え流石にこの事に関して情報が漏れては後々に大変な事になりかねないので、陛下側には信頼出来る者以外には口外しないようにと言う必要があります」
「まぁそれは当然だとは思うけど・・・なんで皆にも言うんだ?言っちゃなんだけど、反応を伺う為って言っても俺に予想がついてるって聞く辺り皆もある程度想像がついてるだろうから、そこまでする必要はないと思うんだけど・・・」
フレンはそのわけについてを一つ二つと説明をしていくのだが、ルークは皆に言う理由についてを詳しく聞きたいと眉を寄せる。
「・・・言うと言わない、どちらで話を進めるかで雲泥の差が出来るからこそになります」
「・・・雲泥の差?」
「まず言わないで話を進めるなら当然、ナタリア様達にはこれからも何も言わず事態を進めていくことになりますが、そうなれば我々が行動を起こしたのではと考えることなくこれからの事を偶然で片付ける可能性も出てきます。そうなれば説明の手間を省ける事は省けますが、反面こちらもまたナタリア様達に合わせて何も知らないといった体をとる以外に手段はなく裏で動くしかありません」
「・・・その代わり、言うなら今言ったことと逆になるって訳か。そしてそれに付け加えて言うなら、ティア達に動揺は確実に現れる・・・これでいいのかって、ダイクロフトの面々と一緒に行動するべきかって動揺が」
「・・・確かにそうなると我々の中でも話し合いになりましたが、最早引き返せぬ所に今は来ています。ナタリア様達は当然の事ながら、我々自身もです。そのような中でナタリア様達に事実を悟らせず、それでいて全て上手く行かせる事は流石に他の皆の協力があっても難しいと言わざるを得ません」
「っ・・・そうだな・・・いくら隠したってそれがうまく行くなんて保証はどこにもないどころか、バレたらそれこそティア達がどう行動するか分かった物じゃないんだ・・・そう考えると揺れるって事を覚悟の上で話をした方がまだ予想出来ない事態が起こるなんて事はないか・・・不満とかそう言った事は確実に出ては来てもな・・・」
フレンはその理由を雲泥の差と言い2つのパターンについてを述べ、ルークはどちらにも危険性があると聞いて話をした方がいいだろうと苦い考えに至る。比較論でしか答えを選べない為に。








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