各勢力は手を打つ

「・・・少しもしもの場合に進みすぎたから話を戻すぞ」
ピオニーはそこで自分も言い過ぎたと思ってか、その話についてを打ち切る。
「俺としては一先ず先に言った二つのリングの操作を済ませ、キムラスカに連絡を取り和平と障気についてを話し合うという方向でいいとは思う。残る問題はヴァンの事もあるが、やはりモースだ」
「・・・先程私がモースの地位や発言権については無理だと言いましたけど・・・」
「あぁ、それはそうだが俺が言いたいのはその問題を解決する時にモースにもその場に立ち合わせる事が出来ないかと思っている」
「モースをその場に、ですか・・・?」
それで話題の中心をモースとするピオニーが立ち合わせたいと言い出したことに、イオンは怪訝そうに眉を寄せる。
「今までの会話からある程度分かるだろうが、俺の中にはモースに対する信頼は無いと言っていい。導師だけならまだダアトを信頼出来ると言えるがな・・・そんなモースを信じるかどうかも含め、見定めるきっかけとして連れてこれないかと言ったんだ。なにしろモースはマルクトに足を運んだことすらないから、いくら印象が悪いとは言え実物を見ないことにはな」
「へ?・・・一回もモース、マルクトに来てないんですか?」
「あくまで俺の記憶の中での話だがな。少なくとも俺が帝位についてから導師は来ても、モースに会うどころか来たという連絡すら受けたことはない」
「あぁ・・・そうなんですね・・・(思わず声を出してしまったけど、モースの性格に考え方なら有り得ない事じゃないか・・・こういう言い方はどうかとは思うけど、マルクトはモースからしたら滅びる相手だから取り入る必要はないって来訪する気も起きなかっただろうし・・・)」
ピオニーはその訳について話すのだが、マルクトに来たことがないと聞いて不意にルークは疑問を口に出してしまうが全くと強調するように返されしみじみと内心含めて納得する。



(え?・・・今のルーク、髪を切ってからのルークの感じになってなかったかしら・・・?)
・・・そんな演技が外れかかったルークの姿に、ティアは半信半疑ながらも感じた。髪を切ってからのルーク、もとい素のルークになっていたことを。
「まぁそんなわけでもし和平にこぎ着けるまでの段階に来たのなら、実際にモースと会って話がしたいんだ・・・なんとなくどうなるかという結果は見えてはいるがな」
(あぁ・・・モース様の考え方ならそんな場には来ないわね。むしろなんで行かなきゃならないって言いそうだし・・・ピオニー陛下もそう思ってるのね・・・)
だがその事について考えを深める前にピオニーがモースに対してそこまで期待してないとばかりの言葉に、ティアもまた納得する・・・まずモースはそこに来るわけはなく、ピオニーと話をする気などあるはずもなく逃げようとするのではないかと。
「・・・よし、とりあえずこの話はここまででいいだろう。一応方向性は決まったことだからな」
ピオニーはそんな一種の諦めとも思える発言を振り払うよう、和平にモースに関しての話題を終えると告げる。
「次に、お前達から何か聞きたいことはないか?」
「それでしたらカイツールのキムラスカ兵士に関してはどのようにしているかという話をお願いします」
「あぁ、そちらに関しては問題ないとの報告は受けている。マクガヴァン親子からの手紙では現在エンゲーブ付近でセントビナーの軍と対面上に陣を敷いて待機してもらっているとの事だが、思いの外向こうに敵対の意志がないどころか友好的に声をかけてきているそうだ。やはり魔界に降りた事にそこから助かったことが効いたのだろうな。向こうからすれば」
「そうですか・・・それなら一先ずは安心してもいいですね」
それで皆を見渡しながら話題を振るピオニーにヒューバートはカイツールのキムラスカ兵士についてを聞き、その問題のない様子の報告に周囲の面々も同じようにホッとした面持ちになる。












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