各勢力は手を打つ

「ではそれらについての手紙をグランコクマに出しましょう。リオンがこちらに戻ってくるには時間があるでしょうし、先にピオニー陛下にこの話を通しておいた方がよろしいでしょうからね。皆さんはこのままゆっくりしていてください、私は手紙を書いてきますから」
そしてジェイドが一連の流れについての報告をすると言い、場を後にする。
「・・・さて、とりあえずもう話は何もないようだししばらく黙っておこう。リオンが戻ってくるまではまだ時間がかかるだろうし、あまり話しすぎても領事館の人達にとって迷惑だろうしね」
それでクレスが余計な会話は無しにしようと気を使った発言をしたことに、特に反論が出てくることもなく一同は頷く。



(・・・とりあえずナタリアがバチカルに行こうとすることを止めることが出来たっていうのはよかったけど、やっぱりこれからが重要になるよな・・・和平の事もそうだし、師匠達にモースの事も・・・)
それで一同が余計な言葉を挟むことなく黙りこむ中、ルークは一人考え込む。これからの事についてを。
(多分和平自体はそれこそヒューバートが言ったように外殻大地の危険性が向こうに知られることになれば、それで叔父上達も前みたいに和平を受けるっていうか受けざるを得ない状態になると思う・・・問題は今の状況においての師匠達にモースになるけど、和平に関しては師匠達は積極的に介入しないだろうからまだいい・・・問題なのは、是が非でも戦争に持っていこうとするモースになる・・・)
その中でルークは考えを深めていく内に、当面の最大の障害はヴァンではなくモースだと考える。
(流石に今の状況ならモースも一概に戦争を仕掛けようとはしないだろうけど、それも外殻大地の降下が完全に済んでしまえばそれこそモースが好き勝手に行動を起こすのはまず間違いない・・・説得でどうにかなるとは、まずとても思えないんだよな・・・だから止めるなら、やっぱり・・・殺すしかないんだよな・・・)
その理由についてを考える内に、ルークはどうしても避けえない問題にぶつかり気分が重くなるのを自覚していた。モースを止めるにはもう、死なせる以外に手段が思いつかない為に。
(多分大詠師の地位から降ろしてどうにかしたって、根本的に考えの変わらないモースは絶対に脱獄でも地位を用意するとかいって説得してその環境から抜け出すのは間違いないと思う・・・預言を実行するために。そして預言がもう詠めない状況になっても、それで諦めるとはまず到底思えないしもし預言復活を願う人達がモースに同調を示したら厄介な事にしかなりかねない・・・師匠達については一度で倒すつもりだから、余計にモースについての対応は誤れない・・・んだけどなぁ・・・いざ、殺すってなるとやっぱり嫌なもんだな・・・)
ルークはそのままモースを生かしておく事のデメリットについてを考えるのだが、理性の中での最善を選ぼうとしても感情が邪魔してくるのを感じてしまう・・・前は化け物となって話も通じない状態になって襲い掛かってきたからこそまだ落ち込みそうになる気持ちも多少は紛れたが、人間の状態で化け物になる前に殺すと考えるとどうしても気持ちなど紛れることはないために。
(でも、やらなきゃいけない・・・今度はあんなことを起こさせたくない・・・あんな、フリングス少将達がモースの暴走の為に殺されてしまうような事なんか・・・!)
しかしそれでも殺すことを止めないと決めた理由は、以前のフリングスの死・・・キムラスカがマルクトに攻撃を仕掛けたと誤認させるための無理矢理でいて、人の命など預言に比べて何とも思ってないとばかりの暴挙のようなことを二度と起こさせたくないと強く願うからにある。だからこそルークは殺すことへの忌避を感じつつも、それ以上の決意を胸にしていた。モースを絶対に止めようと・・・








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