各勢力は手を打つ

「では私達は早速大詠師の方に向かいたいと思いますが、皆さんは念の為にまだしばらくこちらにいてください。おそらくダアトに向かう船に乗ると思われますが、それまでに見つかったなら面倒になるでしょうから」
「えぇ、分かりました。ただモースがいつここを出るかですが・・・」
「それについてならモースにすず達がケセドニアを出るまでは僕が付いていこう。そしてケセドニアから出たなら報告に戻る」
「そうしていただけるなら助かります」
それですずの慎重な言葉にジェイドは更なる懸念を上げるが、すぐにリオンが自分がやると言い出したことに礼を言う。
「では我々は早速そちらに向かわせてもらいます。皆さんはしばらく待っていてください」
そしてすずが出ると言い代表の面々はその後に付いていき、領事館を後にしていく。
「・・・さて、少し待たねばならないようですから時間を無駄にしないためにもこれからどうするかについてをここで話し合いをしましょう。まさかモースがそのような行動を取っているとは思いませんでしたからね」
「そうだな・・・こちらとしても少々意外だったからちょうどいいかもしれないな」
ジェイドはすず達が領事館を出ていったのを見計らい話し合いを皆に向けて提案し、ユージーンもその案に同意して頷く。
「・・・では一つ気になるのですが、大詠師がいなくなったバチカルは現在どうなっているのでしょうか?話によれば大詠師の指示というか預言があったからこそ、キムラスカは戦争に踏み切ったということですが・・・」
「それは、お父様達はこのような状況になったのもあってどうするべきかと迷われているに違いありませんわ!今なら私がバチカルに戻れば、お父様も分かって・・・!」
「それは止めてください、ナタリア」
「ジェイド!何故ですの!?」
そんな場でバチカルについての疑問を真剣に口にしたフィリアにナタリアがチャンスだと声高に口にしかけるが、すかさずジェイドが制止の声を向けてきたことに勢いそのままに何故と問う。
「確かにモースがケセドニアに来たのは事実でしょうが、かといって彼の手の者がバチカルに残っていないとは限りません。現に我々はベルケンドで謡将とリグレットの二人にこそ会いはしましたが、他の六神将の姿を見てはいません・・・もしバチカルに行き、彼らの内の誰かがいるようでしたら陛下達が説得に応じてくれる可能性は一気に低くなるでしょう。建前上は六神将はモースの部下ですからその意向を汲んだ上でその場にいると見られているならば、陛下達は迂闊に彼らに対する態度を変えることは難しいどころではないでしょうしね」
「うっ・・・!」
「それに、そうでないにしてもキムラスカからすれば振り上げた手を簡単に降ろせるような状況ではありません。モース達の目があることもそうですが、様々な思惑を持つ者達がいるからこそ尚更です。その中でも最もキムラスカが引けない大きな部分を占める理由は、マルクトに対する不満や反抗感情を持つ者達が多数を占めているからこそです。長年睨みあっていた両者がようやく決着を着けるために動き始めたと言うのに、生半可な理由で戦争を止めた・・・となれば、インゴベルト陛下達に対する批判の声が大きく上がるのは間違いないでしょう」
「で、ですがパダン平原を中心とした大地が魔界に落ちたのですから・・・」
「確かにあちらもパダン平原が落ちたことは想定外の事だったでしょう。おそらくあちらも動揺し、戦争についてどのようにすべきかと考えているかもしれません。ですがパダン平原はあくまで開戦時の主戦場となる場所であって、そこを制圧すれば単に戦争の勝敗がつくなどという単純な物ではありません。だからこそキムラスカ側と言うかモースが一時休戦を申し立て、別の手段を今考えている可能性がどうしても否定出来ません。私からすればとてもバチカルに行っても大丈夫などと太鼓判など押せる筈もありませんね」
「・・・くっ・・・!」
(ジェイドが辛辣・・・って言えないよな、これは。ナタリアに危険性を理解してもらわないと、ナタリア自身も俺達もまずいことになりかねないんだし・・・)
そこから二人の激しい話が行われた・・・と言うよりは眼鏡を押さえながらのジェイドの一方的な言葉の羅列に、ナタリアは反論の目を潰されていった事もあって悔しそうに下を向く。そんな光景をルークは仕方無いと黙って見ていた。ジェイドの判断が妥当と考えた為に。







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