各勢力は手を打つ

「・・・今の状況では少し聞きづらいのを承知でお聞きしますが、ティア。貴女はモースがどう行動するのかとの心当たりはありますか?」
「・・・それは、兄さんに連絡を取るくらいしかないと思っています。モース様は自分で動くとは思えませんから・・・」
「まぁ妥当な所でしょうね・・・となれば謡将達の元に今頃はモースからの指令という名の手紙でも届いてる所でしょうから、もう少し長く滞在していたなら彼らに捕縛されていたかもしれませんね」
ジェイドはそんな姿に一応の断りを入れつつ問い掛けると、そのままの状況でヴァンの名を出すティアに納得した上でもしもの可能性を口にする。危険に満ちていた状況についてを。
「・・・つーか、この状況ってどうなんだ?モースがダアトに戻るってのもそうだが、バチカルからいなくなったってのがいいことなのかどうかがイマイチ判断しようがない気がするんだけどよ・・・(前は戦争が始まったって状況だからモースはダアトに戻ったけど、そうじゃないのに戻るってどうなのか本当に分からないんだよな・・・これからどうなるか・・・)」
「そうね・・・モースがバチカルからいなくなったこと自体はまだ素直にいいことと言えるかもしれないけれど、他はどうとも言いようがないわね。勿論彼を放っておいたらあまりいいことにならないのは目に見えているけれど、だからこそこれからがどうするかが重要になるでしょう」
「「「「・・・」」」」
今度はルークが内外共に微妙そうな気持ちを抱きながら不安を口にし、ジュディスがその考えを強調するように補足をした事に周りの面々も重い表情で黙りこむ。事態が事態なだけに、アッシュでさえルークの言葉とは言え簡単に否定出来ない状態で。
「・・・でしたら、私は大詠師の方に向かいたいと思います」
「え・・・どうして、すずちゃん?」
「現状で大詠師を放っておくのは危険だと感じたからです」
そんな中で沈黙から言葉を発したのはすずだが、その発案にミントが意外そうに訳を聞いてきた為危険だからと返す。
「大詠師の行動はある意味では謡将より読めない物と言える物です。そんな大詠師がキムラスカから離れ、どのような行動を取り指示を出すのか・・・それ次第ではマルクトが一気に危険な事態に陥りかねません。そんな事態を避けるためには、大詠師の状況を逐一知る必要があると思ったんです」
「・・・それを知るためにすずちゃんが一人で行くと言うの?」
「いや、それには私も付いていくよ。流石にすず一人に任せるのは無責任だし、こういった事は私の役割でもあるからね」
「なら俺も付いていくわ。二人程動ける訳じゃねぇが、何かの役に立てるかもしれないからな」
「私も行くわ。ユーリじゃないけど、私も何かやれるかもしれないしね」
「しいなさんにユーリさん、それにルーティさんまで・・・」
すずが真剣に淡々と話をしていく中でしいなにユーリにルーティまでもがその案に従うとしたことに、質問していたミントは何とも言えないといった声を上げる。
「どうですか、ジェイドさん?それでいいでしょうか?」
「・・・そうですね。私としてはそうしていただけるなら助かりますが、その分の危険も付きまとって来ることになります。それでもよろしいのですか?」
「はい、大丈夫です」
「・・・ではお願いします。こちらとしても大詠師の行動についてを知れるのは実にありがたいことですからね」
そして改めてこの案はどうかと聞くすずにジェイドは確認を向けるが、迷いのない即答に頭を下げる。モースの事を知るため、すず達に後を任せると決め。








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