一先ずの再会

(私らしくない・・・そうよ、あの時私は何も言わなかった・・・ルークのあの様子が意外だったから呆然としたというのを差し引いても、前だったら私は何か兄さんに言っていたはず・・・あれは私のミスになる、の・・・?)
それで領事館の中の一室に一人入ったティアはベッドに腰掛け考え事に入るのだが、ジュディスからの言葉に混乱し何をどう思いたいのか分からないと言った心中になっていた。



・・・ルークとティア。経緯は違えど共に以前の記憶を持ちながらオールドラントの過去に戻ってきた身ではあるが、二人の間には他にも様々な物はあれどもその中で決定的に大きな違いが一つある。それは他者に対する想いだ。

ルークはこのオールドラントに戻ってきてから色々と考えてきた。助けれる人がいるなら助けたいしヴァン達とまた戦う時には正面から向き合うと。それは演技をしているからどうかは関係無くより良い未来を掴んだ上で後悔しないようにするためだ。現にベルケンドでヴァンと会った時もルークは確かな気持ちを持って、ヴァンにリグレットの二人と対した。

一方でティアはどうなのかと言うと、良くも悪くも・・・どちらかと言えば悪い面の方が目立って仕方無いが、様々な物を切り捨てた。ルークを得るため、より良い未来を得るためにヴァン達への情などをだ。その判断自体が間違っていたとは言わない、悩みを無くそうとすることは・・・が、間違っているのはティアが自分の事をよく理解しないままそうしてしまった事にある。

捨てるということは不必要な物を排除するだけの行動と思われがちだが、捨てるという行動自体には必要も不必要もない。必要か不必要かを判断するのはあくまで当事者の中での判断基準に過ぎない・・・つまりは、当事者にとって必要な物を捨てる事も十分に有り得ることだ。もし捨ててはならない物があったとしても都合よく誰か、もしくは何かが捨てるという行為を止めてくれる事など現実的にまず有り得ないのだ。そして逆に不必要な物を捨てずに置いておくのも、同様の事と言える。

その点でティアがもうヴァンに関してもう情を捨て去った事に関しては、敵として見ると決めた事は評価は出来る。だがそこでティアは『兄を慕う妹』という顔をそのまま残していた事をすっかり忘れていた、それも現在進行形のままだ。

兄を慕い、兄を想い、兄を止めたい・・・今までのティアの行動に考えからすれば、ベルケンドでヴァンに何かを言うのが予想される行動パターンだ。だがティアは割り切っているからと兄に対しての苦心に想う演技をする事もなかった・・・いくらルークの発言があったからと言ってだ。

だがそれでも今のティアなら何も言われなければ、自分の不自然さに気付くこともなく今頃はルークに対してどうしようかと考えていた事だろう・・・だが、ジュディスにその事を突かれてしまった今は違う。



(・・・分からない・・・一体どれが私らしさで、私らしくない行動だというの・・・!?)
ひたすらにティアは自分らしさとは何か、自分とは何かと自問自答を繰り返していく・・・誰よりも自分という物を強く持っていると、そうありたいと思ってきたティア。だがかつての自分とのズレを生まないようにと表向きは前のようにとトレースしてきた行動と、今の自分自身がどう思っているのかという本質についての差が何なのか・・・それをジュディスからもそうだが、もう敵と断じた兄から間接的ながら突き付けられてしまった。その事を今更ながらに考えさせられる事になったティアは自身の核に迫ることであった為、尚更に混乱の思考の渦に陥っていった・・・















自身の根幹に関わる人物に対する向き合いかた



互いに関わった筈なのに、こうも違ってしまう



この違いはあまりにもわかりあうには大きすぎる・・・



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