かつての始まりは既に変貌している

(あぁもう!こんな面倒な事を押し付けないでほしいわ!こんな時は貴方のわがままで同行は嫌だって言うところでしょう!)
一方一人残されたティアはアドリビトムの面々を前に内心で都合のいい怒りをルークに向けていた。わがままであることを望んでないはずなのに、今はわがままなんだからそうしろと。
(・・・でもどうしようかしら、本当に・・・一緒に行くのは嫌だからとか関係無いから待ってなんて言うのは流石に一方的過ぎるけど、この人達と一緒というのは嫌だし・・・)
その中で改めてどうしようかと思うがティアにいい考えが浮かぶはずもなく、目の前の団体から視線を背ける。その中から何人か距離を取り始めてる事に気づかないまま・・・









「待って待って~!」
「・・・ん?何だ、聞き覚えのない声だな・・・」
それで少しして皆から離れ入口の方に向かっていたルークの耳に聞いたことのない声が届き、不機嫌な顔を作りながら振り返る。
「よかった~、追い付いた~・・・」
「追い付いたって何だよお前・・・っつーかお前らと俺らはなんも関係無いだろ・・・」
(えっと・・・誰だ、これ?・・・後ろにいるのはユーリにルーティにウィルってわかんだけど、見たとこジーニアスやマオと同じくらいだよな・・・それにこっちは犬、か?なんか片方の目は傷入って閉じてるし、キセルとか加えてて妙な感じだし・・・)
そこに来たのはルークにも見覚えのない少年と犬?で安心したような表情を浮かべているが、ヒューバート同様知らない存在なだけに内心首を傾げる。
「関係無いなんて言うなよ。こっちはあんたの身の危険を考えてここまで来たんだからな」
「っ・・・んなもん誰も頼んでねーっての。第一名前どころか顔も知らねぇし、何やってるかもわかんねぇような奴らに何で俺が心配なんかされなきゃなんねーんだよ」
今度はユーリがまた以前のようトゲがある言葉を向けてきた為、少しムッとしたように返す。
「名前ねぇ・・・この際だから名乗っておくか。俺はユーリ=ローウェルだ」
「俺はウィル=レイナードだ」
「何?私も名乗るの?・・・私はルーティ=カトレットよ、よろしく」
「僕はカロル=カペルでこっちはラピード!皆アドリビトムっていうギルドのメンバーだよ!」
「ギルドぉ?」
(こいつらはカロルにラピードっていうのか・・・それにアドリビトムってこれはまた、偶然にも程があるよな・・・メンバーに色々違いはあるけど)
そんな声にユーリから仕方ないといったように始まった自己紹介を受け、最後のカロルの元気沢山の声に訝しみの視線を向ける中で懐かしみの想いを抱く。
「・・・で、そのギルドってもんが何か知らねーけど俺の身の危険がお前らに何の関係があんだよ?」
「えーっと・・・その事なんだけど僕達ってキムラスカとマルクトとダアト、それとケセドニアにも属さない形でギルドを運営してるんだけれど最近ちょっとギルドとしての活動がやりづらくなってて・・・噂じゃ戦争が近いからって結構ピリピリしたムードがあって、それで本当に戦争になったら僕達困るんだ。国の行き来が難しくなるし・・・それで何でかマルクトにファブレの子息って人がいるってなったから、下手すると戦争になるんじゃないかなって・・・」
「それで俺らを追い掛けてきたってのか?戦争にならないようにって」
「うん・・・」
「ふ~ん・・・」
(・・・まぁ筋は一応通っちゃいるな、カロルの言うことは。ギルドとしての痛手もあるから決断したって理屈的には考えるやつがいてもおかしくはないし)
だがと心中を匂わせず表向きは強く疑いの目と問いをルークは向けるとカロルは一生懸命に切実な事情を切り出し、その事情にルークは表裏共に納得していた・・・が、それとこれはルークにとっては別。
(ま、そういう事なら大丈夫とでも言ってさっさと追い払うか。気遣ってもらって悪いけどな)
「んで、私達をギルドとして雇わないかってのもついでに伝えに来たのよ」
「・・・は?」
追い払おう・・・そう決め口を開こうとした瞬間、笑顔のルーティからの言葉にルークはキョトンとなった。雇うという予想外の言葉に。










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