戦乱に導かぬ為に

「皆の事に関してもそうだけど、どうすればよかったのかって本当に思うんだ・・・俺がやれることはなかったのかって・・・」
「ルークさんっ・・・!」
「うわっ!?・・・ア、アニー・・・?」
そのまま後悔の念をありありと語っていくルークにアニーは唐突に抱き着いてきて、いきなりのことになんなのかと訳も分からず戸惑う。
「あんなことを言ってしまってすみません・・・でももうルークさんはその事について考えないでください・・・もうその事については私達も含めて、終わったことですから・・・」
「私達も含めて、って・・・」
「・・・こうやって事実を知ってしまった私達ですけど、この事をジェイドさん達にと言うかライマの人達に伝える事は出来ません・・・もし事実を明かしてしまったならライマが混乱に陥ることもそうですが、向こうのアッシュさん達と色々と揉める事が簡単に想像出来ます・・・一番可能性が高いのは、こっちに来てルークさんを連れ戻すとかそういったことになってしまうのが・・・」
「っ!・・・それは、正直キツいな・・・」
アニーは構わず話を進めるのだが悲痛な響きを伴わせた現実的な予想を口にされ、ルークもまた苦々しげに表情を歪める・・・おそらくどころの問題ではなく事実を聞いたなら確実にアッシュ達はそれぞれの立場からルークの事を非難して連れ戻そうとしてくると、そう感じてしまった為に。
「私らとしてもそんなことは望んじゃいないのさ。だからこうやってライマの皆には秘密にしてあんたに会いに来たんだからね・・・ルーク」
「ナナリー・・・えっ、ちょっ!?な、なんでナナリーまで・・・!?」
続けてナナリーが発言してきたことにそちらへと視線を向けるルークだったが、左側から抱き着いてきたアニーの反対側からそっと包み込むように自身に抱き着いてきた事にまた戸惑いの声を上げる。
「・・・多分これから先、私らがライマの皆と一緒にバンエルティア号に乗ってギルドの仲間として過ごすことはない。それは他の皆とも話し合って納得したことだ。もう星晶の問題も国の問題も大体解決したからね・・・ましてやアッシュが王位につくとなったら尚更さ。アッシュにナタリアはまずライマから離れることは出来ないだろうし、ティア達に関しても余程の事がなけりゃアドリビトムにまた来ようなんて出来ない状況になるだろうしね。でもね、だからこそあんたの事をこれ以上ほじくり返されたくないのさ・・・あんたのことをずっと悪者扱いするような事を言うだろうアッシュ達に関与させない形でね」
「ナナリー・・・でも、俺は・・・」
「はい、ストップ。あんたが自分が悪いって気持ちを抱いてるのは重々承知しているさ。でもね、アニーの言った通りもう終わったことなのさ・・・私達はあんたをライマの皆の元には連れ戻さないし、その事は言わない。そう選択して決めた事はね」
「っ!」
そして耳元で真剣に話をしていく声にルークは何とか返そうとするが、自分達も選び終わっているとナナリーが言い切った事に衝撃を受けて言葉が止まった。
「・・・あんたは自分がどんな結果になろうが、アッシュとナタリアの二人をくっ付けて王位を譲ろうとした。そしてその考えの為に動いた・・・後悔は確かにあるだろうさ。私達の事を知ってからは尚更にさ」
「ですが私達も選んだんです、事実を言うのか黙るのかと言うのを・・・後になって後悔しないなんて、ハッキリと宣言は出来ません。でも貴方の事を全て明かすことの方が私達は耐えられなかった・・・だから私達はせめて後悔が少ないようにと選択したんです」
「っ!・・・後悔が少ないように、か・・・確かにそうだったな・・・俺もそう思ってアッシュに恨まれてナタリアと本意じゃない結婚をするよりはって思ったんだった・・・」
ナナリーは更に言葉を続けてアニーが話の流れを引き継ぎ断言をするのだが、そこでルークはふと昔を思い出すように漏らす。自分の選択はそういうものだったのだと。










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