口火を消すという意味

「・・・ルーク様、ナタリア様!・・・最初に聞いた時は我々を騙すための虚言かと思ったが、まさか本当だったとは・・・」
「こちらとしては貴殿方と事を荒立てるつもりはありません。状況が状況なだけにね・・・それはそちらとしても同じではないのですか?」
「・・・確かにそうだ、悔しい事にな・・・」
着いてすぐナタリアとルークの二人ともの顔を覚えていたであろう国境の責任者の兵士が二人を見て驚きの後に冷静になるが、ジェイドの追求に苦い顔を浮かべる。外殻大地の降下に加えて障気という、予想だにしていない事態に見舞われている為に。
「さて・・・時間をかけてもいられませんので手早くお話させていただきますが、使者から話はお聞きしましたか?」
「あぁ・・・話によればこの戦争は仕組まれた物というより預言に詠まれた物で、初めからルーク様の死により開始される物であったとか・・・そしてバチカルにも書状を送ったが、それは嘘だと断じた手紙を返され戦争を仕掛けられたのだと・・・」
「えぇ、その通りです。そしてそれが本当だというのは今貴方が二人の事を本物と判断したことからお分かりだと思います」
「むぅ・・・この戦争が本当に預言を果たすための物かどうか、その真偽はこの場にいる我々には判別はつかぬ・・・だがお二人が無事である可能性についてを最初から嘘だと断じた事については、流石にどうかと思ってしまった・・・」
ジェイドは構わず話を続けていくのだがやはり伝えられた情報と事実の差にどうしてもキムラスカの上層部への不信感を抱かずにはいられないのか、兵士は自信の伴わない弱々しい声で返す。
「そう思っていただけるのでしたら話は早いのですが、そちらはまだ混乱覚め遣らぬといった状況なのでしょうか?」
「・・・認めたくはないが、その通りだ。現在港の方にいるアルマンダイン伯爵にも連絡を取ろうとしている最中だが、時間が時間の為にまだ返事は来ていない。本当なら伯爵も交えてそちらの言うダイクロフトとやらが本当かどうかの確認も含めて話をしたいところだが・・・今の状況では少し時間を置かねば無理だろう」
「そう、なのですか・・・出来れば皆さんにはすぐにでも私達と来てもらって、安全な所に待避してほしいのですが・・・」
「申し訳ありません、ナタリア様・・・私はまだ比較的冷静でいられてはいると思いますが、ダイクロフトが本当かどうかはさておいたとしてもマルクトに付いていくなどと考え手を出す者も現れかねません。そうしたなら例えこの状況下と言えど、我々とマルクト側の争いは止められなくなるでしょう」
「・・・元々戦争の為に戦う準備してたんだし、罠だとか疑ったり反目する奴も出てくる可能性があるって訳か」
「・・・はい、現状ではルーク様のおっしゃる通りになる可能性は捨てきれません」
「成程な・・・」
続けてジェイドの確認に兵士が律儀に答えていく中でナタリアが弱いながらも確かな願いを込めた言葉をかけるが、今の状況では望ましい事ではないと苦々しく返す様子にルークも演技と本気を入り交じらせた様子で真剣に納得する。
「・・・そういうことでしたら急くわけにはいきませんが、このまま貴殿方がここに留まり続ければそう遠くない内にアクゼリュスの住民と同じように体調を崩すことになるでしょう。ですからそう遠くない内に我々はこちらに戻ってきます。それまでに協議した上で選んでください。暴れぬと確約した上で救助を受け入れるか拒否するかを」
「・・・それはいいのだが、せめて一度ダイクロフトが本当かどうかというのを私を含め何人かだけでも実際に見せてはいただけないか?流石に話だけで全て事情を鵜呑みにしろというのは、他の者に説明するにしても無理がある」
「・・・ふむ、それもそうですね。事実、私も行くまでは嘘ではと疑いましたし・・・」
その上で選択を提示して話をまとめようとするジェイドだったが、兵士のダイクロフトを見たいとの要望に納得する。要求としては妥当と。









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