口火を消すという意味

「・・・意外そうな顔をすんなよ。アッシュが俺達に付いてくるようになってから、あいつと離れてる時間の方が珍しいのなんて俺じゃなくても感じてる事だろ。多分お前らもそう思ってるんじゃねーのか?」
「えぇ、そうね。貴方とナタリアがこうやって会話を交わしたのなんて最近では記憶にないもの。それこそアッシュが来てからまともに会話をしたのかと思えるくらいに・・・」
「・・・あ・・・」
ルークは頭をかきながらユージーン達に視線を向けて珍しい事だろうと同意を求めると、ジュディスが意味深な笑みを浮かべて同意する姿と視線にナタリアもハッとする。それこそアッシュが来てからルークとまともに会話した記憶など、ナタリアの中になかった為に。
「・・・別に構わねぇよ。気にすんなナタリア」
「えっ・・・な、何故そんなことを言うのですかルーク・・・?」
「・・・質問に質問で返すようなことを言うけど、お前俺にどんなことを言ってほしかったんだ?」
「どんなって・・・それは・・・その・・・」
だがルークが怒りなど見せず淡々と返す様子にナタリアは途端に不安そうな目を向けるが、細められた目からの静かな質問返しに視線をさ迷わせる。
「・・・どんな風な答えを俺から欲しかったのかは知らねぇ。が、別に俺はもう納得してんだよ。俺とアッシュ・・・お前が求めてた『ルーク』はアッシュだってことにな」
「っ!ル、ルーク・・・それは・・・」
「もう今更だろ、ナタリア。それに納得してるって言ったろ、俺はな・・・だからもう気にすんな、あいつの方にいろよ。じゃねぇと・・・アッシュが機嫌損ねるばかりか、全部終わったらキムラスカに戻らねぇって言い出しかねねぇぞ」
「っ!・・・ルーク・・・」
「・・・とりあえず今はキムラスカ側に話を通すことに意識を集中しろ。もうそろそろ着くぞ」
「っ・・・はい・・・分かりました・・・」
ルークはそのまま話を主導していくのだが自分の事は気にするなと強調する姿にナタリアは何かを必死に言おうとするが、もうすぐ着くと話を打ち切るように言われて力なく頷くしか出来なかった。
(あ~・・・ナタリアにとっちゃ厳しい言い方じゃあるんだろうけど、ここで俺の方に気を使って行ったり来たりなんてことをされたらそれこそまずいんだよな・・・だからこそ、ここで突き放すように言っとかないとな。まぁこれですんなり行くわけはないとは思ってるけど、後々の為にはやらないよりは全然マシだろうし・・・)
そんな姿に視線を前に向けながらルークは内心で考える。一先ずこれでいいだろうと後にまだ問題が残っている事を確信しつつ。
(ナタリアはまだいい、多分アッシュと俺の間で右往左往する様子が目に浮かぶ・・・その代わりアッシュはまず入るとしても、ティアがどう反応するか分からないのがな・・・あの感じだとこれから・・・)
そしてその問題についてアッシュの事より、ティアの方が不安だとルークは感じている。さっきの反応があるからこそ、全く読めないとばかりに。
(でもだからこそ事を進めるのに最適な時を見逃さず動かないとな・・・ティアがいない内にやることをやれば邪魔はされないはずだし・・・)
しかしルークの心には油断は存在しない上、ティアの行動は邪魔だという認識すら生まれている・・・至って冷静にルークは決心を固めていた、これからは内密でいて的確に行動していこうと・・・









・・・そんな風にルークが考えている中、一同はキムラスカ側へと辿り着いた。







14/20ページ
スキ