焔の決意と知りし者達

「え・・・オールドラントに戻れって・・・?」
・・・いきなりのローレライの懇願にルークはたまらず聞き返す。まさかのことをいきなり聞かされたことで。
『言葉通りだ、オールドラントに戻って欲しい。今の現状ではそれが最善と我は思った。このままでは安定した暮らしをルークが送るには到底無理だとな』
「・・・確かにそうだろうけど、俺の体って向こうじゃもう、その・・・大爆発でアッシュの体になってるから、無理なんじゃないのか?俺が戻るのは・・・」
『問題ない、そなたが戻るのはそれより以前の・・・過去だ。そなたが旅をする事になる前のな』
「過去・・・っ!?」
だがただ望みを告げるローレライに大爆発のことを聞いて知っていたルークは無理ではと問うが、旅をする前の過去と聞かされ驚きに目を見開く。
『そう、過去だ・・・何も我も考えなしにそのようなことを言ったわけではない。そしてこれがベターな選択だと思った為に言ったのだ』
「ベターって、その・・・俺が生きられる選択、か・・・」
『あぁ、今のままではどう辿り着いた所で終わりの見えない放浪生活がそなたの行く末としか我は思えん。ならばこそ我は過去のオールドラントにそなたを戻すべきと考えたのだ。その方がそなたが新たな道を切り開けると思ってな』
「・・・ここの、ルミナシアの過去じゃ無理なのか?」
『我の力ではまず難しい。ここはオールドラントと違い世界樹があることで我も世界樹の影響を受け、うまく力が使えんのだ。下手にルミナシアの過去に送ろうとすれば世界樹にそのエネルギーを取り込まれるか衝突をするかで、そなたに我が何処とも知れぬ世界に飛ぶ・・・いや、それならまだいいが最悪消滅することすら有り得る。それほどに危険なのだ。世界樹のある世界で時間の壁を越えることは』
「・・・っ!」
ローレライの推測を聞いてたまらず息を呑むルーク・・・今のルークにとって死は確かな恐怖を抱く事柄と言えた。生きたいと願う今のルークからすれば。だがそれでもそう聞いたからにはルークには聞かねばならぬ事がある。それは・・・
「・・・ルミナシアの時間の壁を越えるのが難しいのは分かった。それでオールドラントに戻ることは可能なんだな?」
『あぁ、ただし・・・そなたの身体はレプリカとなり、アッシュの居場所を奪うことになるがな』
「やっぱり、か・・・」
・・・そう、自分の体とアッシュに関することだ。慎重に問いを向けるルークにローレライは意図を察し正直に答えると、ルークは表情を暗く落とす。
『・・・そなたにとっては辛いこともあった世界であり、他にも様々な障害は出てくるだろう・・・だがそれでも、我はそなたに生きていて欲しいのだ。今度こそ誰にもはばかられることなく、日の目を浴びるように・・・』
「っ・・・ローレライ・・・」
しかしそれでも、と切に自分が生きることを願う声を向けられルークは悲し気な声を上げる。
『・・・頼む、ルークよ。この話、受けて欲しい。もう我はこれ以上そなたが一人虚しく生きていく姿など見たくはないのだ・・・』
「・・・俺にもう一度、師匠に裏切られろっていうのか?そしてもう一度、アクゼリュスの人達やレプリカの人達を殺せって言うのか・・・?」
『いや、何も我は再度あのようなことを繰り返してもらう必要などないと考えている。戻ってから先のことはそなたに任せる・・・ただ、自分の身を省みない捨て鉢な行動に結末を選ぶのはやめて欲しい。我はそなたに今度こそ幸せになってもらいたいのだから・・・』
「・・・」
再度向けられるローレライの懇願にアクゼリュスやレムの塔の事を思い返したのだろう・・・また悲劇を繰り返さねばならないのかとルークは口調を厳しく問い質す。だがそんなつもりはないと自分で思うようにやるように言い、更に自分の幸せを考えてやってほしいと条件付きでローレライが言ったことにルークは考え込むよう頭に手を添え目を瞑る。



「・・・ローレライ、お前認める気はないのか?俺がここで一人で生きていく事を」
『・・・無論だ。確かにオールドラントには困難が待ち受けているであろうが、今の状況をただ看過するつもりはない』
「そうか・・・わかった、俺はオールドラントに戻るよ」
『真か!?』
「あぁ」
・・・数分後、確認するように声を上げたルークに迷いなくローレライは是と答える。その返答にルークも観念したようその申し出に頷き、再度のローレライの慌てた念押しに再度頷いた。









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