口火を消すという意味

「・・・戻ってきましたか。皆さん、御苦労様でした。キムラスカ側から攻撃を受けることもなく、今の様子もパッと遠目で見た限りでは困惑していると言った様子です。とりあえず大丈夫と見ていいでしょう」
「いや、気にすることはない」
・・・カイツールの入口付近にて集まって会話をするルーク達。
ジェイドが労いの言葉をかけるとウィルは大したことはないと首を振る。
「後はダイクロフトの方々がこちらにそろそろ来てくれるとありがたいのですが・・・」
「・・・少し遅れたようだな」
「・・・大丈夫ですよ、むしろちょうどよかったくらいです」
続いてジェイドはダイクロフト組についてを口にするが、タイミングを計ったかのよう現れてきたリオン達に返答しつつもその声量は少し抑えられていた。聞かれていると思っていなかったいうのを隠さんとしていたとばかりに。
「とりあえず全員揃ったようですので話を進めたいと思いますが、まずはヒューバートから言いたいことがあるとのことですので先にどうぞ」
「ありがとうございます、ジェイドさん。では話をさせていただきます」
そのまま何事もなかったとばかりに話を進めるジェイドだが、そこで話があると先程言われたとヒューバートにバトンを渡しヒューバートは話を始める。数時間前に話したことについてを・・・












「・・・成程、キムラスカ側に説明ですか」
「えぇ、後で助ける時に下手にごねられても具合を悪くする人を増やすだけでしょうしね。それでルークさんには先程話してそうするならやると返答していただきました」
・・・そして一通りヒューバートからの説明が終わり、ジェイドはナタリアに視線を向ける。
「それでナタリア、貴女はどう思いますか?」
「当然賛成致しますわ!彼らに長い時間苦しむようなことなど望むはずがありませんから!」
「・・・ならば、決まりですね」
そのまま確認の声を向けると断ることなど有り得ないとばかりの即決のナタリアの勢いのこもった声に、ジェイドはそっと頷く。
「ですが今すぐという訳にはいきません。まだ外殻大地は完全に降下しきっていませんから、降下して少し向こうの状況が落ち着いてから話をしに行くべきでしょう。向こうが話を聞いてくれなければそれこそ言葉通り話になりませんし、ルークにナタリアがいると知ったならこちらに協力しているのではなく捕らえられていたと勘違いで先走りして攻撃をしてこないとも限りませんからね。ですからそれまではカイツールの兵をパッと見て減っていると感じない程度にダイクロフトに移す作業に集中させていただきます」
「っ・・・分かりましたわ・・・」
しかしとすぐには向かわないと訳つきで告げるジェイドにナタリアは反論したげだったが、苦い様子で頷くに留める。
「と言うわけで、早速よろしいですか?一応こちらの兵士達にはダイクロフトに避難することについては言ってはいますが、まだ事実を事実として認識出来ない者もいますから早目に事を済ませた方が後々の為になりますので」
「分かった・・・と言いたいが、報告がある。それは外殻大地が降下する際、セントビナーも共に降下し出したと言うことだ」
「っ・・・セントビナーが、ですか?」
「こちらとしても想像していなかったが、そう聞いたからにはお前もこの状況を放っておく訳にもいかんだろう・・・ピオニー陛下の判断なしの独断になるかもしれんが、こちらが済んだらセントビナーにも救出の手を出すべきだと思うがどうする?」
「・・・そうですね、そうしていただけると助かります」
ナタリアが黙ったことにジェイドはダイクロフト組に向き直り話を進めようとするが、リオンからセントビナーの件と共に対応の是非を聞かされ虚を突かれた形になったジェイドはそうするしかないと少し不本意そうに返す。
(まさかリオンがこんなことを言い出すなんてな・・・ありがたいな、別に示し合わせてたって訳じゃないけどこんな風に言い出してくれたのは・・・)
そんな姿を見てルークは内心でホッとした声を上げる、打ち合わせをして意図した事でないにせよこうもうまくリオンが話を進めてきた事に安堵を覚えながら。






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