かつての始まりは既に変貌している

「なんだ?でけぇ木だな・・・」
「っ、あれは・・・チーグル!」
「チーグルぅ?・・・なんだよ、あのチビは?」
初めてここに来た、そう印象づけるために興味深げにチーグルの住む木に声を上げる中でティアの興奮を抑えようとする声と目にルークは首を傾げる。
「あっ、あの木の中に・・・追うわよ、ルーク」
「はぁ?・・・ってもう行ってるし・・・前よっか可愛い物に暴走する癖酷くなってないか?」
そして返事を聞かずチーグルに向かうティアにルークは小さく本気で呆れつつ、その後を付いていく・・・






‘‘‘‘みゅーみゅーみゅーみゅー!’’’’
「・・・可愛い・・・」
「うわっ、なんだよこいつら・・・こんなにいっぱい集まって・・・」
それで木の中に入りチーグルが沢山集まり一斉に鳴く姿にティアは小さく呟き、ルークはその姿に軽く引いた声を上げる。
「・・・ユリア=ジュエの・・・む、貴方は・・・?」
「うわっ、喋った!なんだよこいつ!?」
「失礼した。私がこうして話しているのはこのソーサラーリングの効力によるものです」
「へぇ~・・・変わったもんがあるもんだな~・・・」
そこに前のようチーグルの長老から声がかかってきた為ルークは驚き感心するが、ティアと共に内心では別の事を考えていた。
((・・・何で長老敬語・・・?))
そう、以前と違い長老がやけに恭しい口調になっていることへの疑問だ。この時点ではルーク達とは関わりがないからそうあることは不自然だと言えた。
「・・・すみませんが、貴殿方は何故ここに?」
「あ?・・・ちょっと道を間違えただけだよ。別に用があって来たわけじゃねぇし」
「そうですか・・・」
「・・・んだよ、人のことジロジロと」
「いえ、言い伝え通りの方が来られたのかと確認をしていたのですが・・・間違いない。貴方は言い伝えにあった通りのお方だ」
「・・・は?言い伝え?」
「・・・どういうこと、一体?」
そんな内心を知らず長老は観察するようルークを見続け苛立ちの声を上げるが、その言い伝えとの言葉に二人はきょとんとなる。
「いえ、これはチーグル族に伝わる伝承なのですが・・・このソーサラーリングをユリア=ジュエより託された時に言われたそうなのです。赤い髪の毛に緑の瞳を持つ者が住処に来たなら、このソーサラーリングと共に季節が一巡りするまで仕えるようにと」
「・・・は?って事はお前、その言い伝え通りに俺に仕えるってのか?」
「はい、これは代々チーグル族に伝えられてきた言い伝えです。絶対に守るようにと・・・現にこのソーサラーリングも元々は我々の言葉を通訳するためとチーグル族の力を多少促進させるだけの機能しかなかったようですが、貴方に仕える為に機能も大幅に上がったとのことです」
「機能が上がった?」
「はい、本来ならチーグル族は空を飛べないのですがこのソーサラーリングを使えば・・・ミュウゥゥゥ!」
「!・・・空を、飛んでる・・・!」
「・・・可愛い」
それで仕える理由は言い伝えだと言いつつソーサラーリングの能力も上がっていると長老は自分で耳を使って空に浮かび上がり、ルークは目を丸くしティアはミュウではなく長老が浮かぶ姿にも可愛いと漏らす。
((・・・もしかしてソーサラーリングのパワーアップが済んでるのってローレライからの贈り物?))
その中で二人は考え事をしていたが、その中身は図らずも一致していた。この以前と違うソーサラーリングの様子はローレライのおかげだと。
(まぁありがたいっちゃありがたいんだけど、別にソーサラーリングのパワーアップってそんなに必要はないような気がするんだよな・・・なんでローレライそんなことしたんだ?前のように行けば別にミュウとまた旅をするようになってただろうし・・・)
(ローレライ・・・ここまでの気遣いをするならどうせなら私にミュウをつけるようにしてくれればよかったじゃない・・・)
いや、一致していたのは最初だけだった。ルークは内心ローレライの行動に首を傾げ、ティアはその言い伝えに関しての文句をブツブツと言葉にする。



・・・両者の考え方には違いがある事に気付けない。何故なら両者共に以前の経験があるとは知らなくて、相手は何も分からないと思っているから。

そしてその考え方が後々両者に多大な差を生んでいく事もだが、片方が絶望を思い知らされることになることを知らない・・・








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