崩壊し行くかつて

「・・・今はこの際アッシュさんがルークさんに対してどういう対応を取ろうとしているのかは置いておきます。ですがナタリアさん・・・貴女は貴女でどういう風な考えをルークさんに対して抱いているのかということは今はまだ決まっていなくとも、後々に重要になっていきます。最初に言った通りにするのか、はたまたその逆か・・・それともどちらともにキムラスカに戻ってきてもらうか、これはナタリアさんには有り得ない選択肢だと思いますがどちらにもキムラスカから離れて欲しいのかと」
「っ、最後の選択肢だけは貴女の言う通り絶対に有り得ませんわ!・・・ただ、私は・・・」
「・・・最後を除いた3つの選択肢の中でどれが最もよい選択なのか、それが分からない・・・と言った所か、今のところは」
「・・・はい、そうです・・・」
そしてすずが続けた話の中で最後の部分を勢いよく否定するが途端に次の瞬間勢いを失ったナタリアに、ユージーンがその真意の確認をすると力なく頷く。
「・・・すず、どうやらナタリアにこれ以上聞くのは酷なようだ。その辺りにしておいてやれ。この件については今すぐ意志をハッキリとさせねばならん問題でもないだろう」
「分かりました、ユージーンさん」
「それとアッシュ・・・今の話を聞いて少しでもナタリアに対して何か思うところがあったと言うなら、どうするべきかと考えてみろ。少なくともキムラスカに戻らないと選択したとしてナタリアに訳も詳しく言わないばかりか、別れの言葉すら言わんとなるならこの場での事もだがナタリアの事も全く考えてなかった物と同じことになるぞ」
「ぐっ・・・!?」
そこにユージーンが見かねたように話を止めるように言えばすずはすぐに頷くが、続けられた言葉と向けられた視線にたまらずアッシュは口ごもる。再度念を押された中身を無視すればナタリアを蔑ろにしたも同然故に、アッシュの語録ではロクに反論出来なかった為に。
(よし、これでアッシュとナタリアに楔を打ち込む事が出来たな・・・後はいかにティアに気付かれないように徐々に進めていくかだ)
アッシュにナタリアの両方共に苦く、重い物に変わり沈黙する・・・ユージーンはその様子を見て内心で成功だと考える。



・・・そう、すずにユージーンがこんな話題を出したのは初めから予定していた事であった。アドリビトムのメンバーで相談しあった上で。その上ですず達が何を狙いとして今の話をアッシュ達にしたのかと言えば、最終的にティアが思うようなルーク達との繋がりの形の一切を全く違う形とするためである。

しかし何故そうする事をアドリビトムのメンバーが考えたのかと言えば・・・



(ティアからルークを引き離すのと同時に、アッシュにナタリアの因縁とも呼べる束縛からルークを引き離すには二人が共にキムラスカに戻る・・・という選択肢は危険だ。それをどうにかするには寧ろアッシュとナタリアの二人をどうにかくっつかせた方が分かりやすい構図になるし、ルークにとっても望ましい事態だからな・・・)
ユージーンはそのまま二人をくっつかせる事についてを考える。



・・・そう、最終的にはアッシュとナタリアの二人をくっ付けた上でルークからは二人を引き剥がすべきと考えたのだ。そして因縁とも呼べる束縛とユージーンが評したのにはまた、れっきとした理由がある。それは二人がくっつかないこと=ルークにその煽りが来るという図式に繋がるからである。

以前はヴァンを倒した一月後にまた事件が起こり最終的にルークがルミナシアに魂だけが逃れついた事でこの事についてはまだ被害は少なかったが、もしヴァン達が復活することなくモースも動かなかったらどうなるかと推測すると・・・アッシュが直接的にキムラスカに来るだろう可能性はまだ低いからいいだろう。問題となるのはナタリアなのだ。

前は一月程度だった為に仕事に忙がしく、ナタリアも余裕は少なかったことだっただろう。だがそこから時が経ち余裕が増えればナタリアはどうなっていったか?・・・十中八九という確率どころではなく、百%の確率でアッシュの事を考えていただろう。それも時間が経てば経つほどに頻度を増す形でだ。

そうなっていったら当然一番問題となるのはそんなナタリアの婚約者であり、本物の『ルーク』がアッシュであると知っているルークである。元々から事情を知っている者同士、気安い関係の幼馴染みとしてナタリアはルークに遠慮なくアッシュの事を話すだろう・・・だがアッシュが戻らないという意志を知っているルークに、いつまでもアッシュの事を想うナタリアの言葉を暇があれば聞いてもらうというのは酷しか言いようがない・・・そしてナタリアはそういった考えに行き着く事は無いだろうし、ルークも互いに対する負い目で何も言えないという悪循環が起こるのは目に見えていた。












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