「導師が優しい方だと言うのはこれまでの旅で重々承知しています・・・ですが我々の存在が明るみに出ることもそうですが、導師であっても大詠師を排斥出来ない現状を考えれば、少なくとも真っ当な手段で事を進めることは到底出来ないでしょう」
「だから、僕は黙らざるを得ないと・・・モースをどうにかするために・・・？」
「あちらがアクゼリュス消滅の為にいかな力業を使ったのかについては、導師も理解出来ている筈です。そしてそれらを元にどう対抗するかと切り返す事を考えるにしても、ただ事実だけを持ってまっさらな言葉を向けたとて大詠師が取り合ってくれるとお思いになりますか？・・・預言の為ならどんな手段、それこそ導師の死を認知してでも是とするような大詠師が？」
「なっ！？ぼ、僕の死をって・・・！？」
「状況から見てどういった報告をしているのかは憶測混じりになりますが、謡将は自分が失敗したことを馬鹿正直に報告している可能性は低いでしょう。もしそうでないにしても導師が共にアクゼリュスに行ったことくらいは報告しているかと思われますが、その場合導師の死までもを計算に入れている可能性は否定出来ないでしょう。それでも尚と言葉だけの説得をしたいと大詠師の元に行ったなら、自身の意志に従わない者をそのままにしておくとは思えません・・・それこそ良くて誰かと接触する事も許されない軟禁状態にさせられるか、死を望まれるかのどちらかしかないでしょう」
「っ・・・！？」
（っ・・・悔しい・・・でも、否定が出来ないわ・・・モース様がイオン様に余計な行動を取らせないようにするのは間違いないのは目に見えている・・・）
ユージーンはそこからモースの状況に加えてどういった考えになっているのかという予想をしていくのだが、自身の身の危険までもを理詰めで語られイオンは絶句してティアはまた一層歯を噛んで拳を握りしめる。嘘や大袈裟とは断言出来ないどころか、むしろそうなるとしか考えられなかった為に。
「・・・導師にとって道理と言うか、倫理の伴わない行動ははばかられることではあると思われます。ただこれだけは理解してもらいたい・・・我々は目には目を、歯には歯をなどというやられたならやり返すなどという思想の元で動いてはいません。ましてや預言に従わない我々の方が正しい、などという正義感で動いてはいません・・・ただこの状況を変えねばならないと、そう思って行動しているのです。その為なら我々は正当と呼べないような手段を取ることも遠慮なく使わせていただきます」
「・・・それが、モースを殺すことになっても・・・ですか・・・？」
「はい・・・もしもの事を考えればやむを得ないでしょう」
「・・・」
ティアの内心など知ることなくユージーンは手段の有無を問わないことを強調し、イオンは確認を取ると辛そうに目を背ける。
「・・・このようなことを聞いた後で我々に協力をするのは心情として難しいかもしれません。ですが協力していただけないでしょうか？パッセージリングの操作の為に」
「こちらからも頼む、導師・・・戦争を止めるのに今一番最適な処置はパダン平原を降下させる事以外にない。キムラスカやモースがどう動くのか分からないのは置いておいて、今はこちらに協力してほしい」
「・・・・・・分かりました。モースの事についてはどうした方がいいのかはまだハッキリとは分かりませんが、今は戦争を止める方が先です・・・パッセージリングの操作に協力させていただきます」
「すまんな、導師」
その上で協力を求めるユージーンにピオニーも真剣な表情で頭を下げ、葛藤の間を見せつつもイオンが了承して頷いた事で一先ずホッとした表情を浮かべた。










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