事態は予想出来ぬ道へ向かう

「・・・ん・・・あれは・・・」
と、ふとルークは街の入口側から歩いてくる影に気付きそちらに振り向く。
「あ・・・ルーク・・・どうしたの、こんな時間に・・・?」
「あ~・・・眠れねぇから出てきたんだよ(アニスまだ外にいたんだ・・・向こうの部屋に行かなかったからそこのとこ把握してなかったな・・・)」
「そうなんだ・・・」
そこから現れたのはアニスで思い詰めたような陰を滲ませる声と顔に、ルークは内心意外に思いながら頭をかきつつ返すと少しうつむく。
「・・・んだよ?部屋に戻りづらいのか?(話の感じだと、ティア達と色々あったから戻りづらいだろうし・・・)」
「・・・さっきのこと、聞いたの?」
「あいつらが戻ってきてしばらくしたらそっちの部屋の奴らがこっちに来たんだよ。大体何があったかはイオンから聞いたらしく、それも俺に伝わった」
「あぁ、そうなんだ・・・」
それで自分から核心をつくルークにアニスは伺うよう視線を向け、ありのままを返す様子にまた重くうなだれた。
「・・・何がお前の中であったかは知らねぇけど、もう決めたんだろ?一緒に行かないって・・・気まずいっつーんなら無理に宮殿に戻らず宿にでも行けよ、ホレ」
「えっ・・・このお金って・・・」
「一応俺もちょっとは金を持ってたからな。宿がいくらするかわかんねぇけどそんだけありゃ今日の分くらいあんだろ。そんで明日の朝になったら戻ってきて、イオンにでも言えよ。気まずいからもう一緒にいるのが辛いって・・・そうすりゃピオニー陛下も聞いてくれるだろ。お前はもう一緒に行かないから保護するって事にしようってな(流石にこの状態のアニスほっとくのもなんだし、下手すっとあのティア相手じゃまた喧嘩になりそうだもんな・・・明日顔を合わせた瞬間)」
そこでルークはめんどくさいとばかりに頭をかきながらもう片方の手でポケットから200ガルド程取り出して手渡し、戸惑うアニスに使用用途を説明しつつ内心こうした方がいいと考えていた。変にいさかいを起こさない為にと。
「・・・ねぇ、ルークは私に付いてこいって言わないの?」
「はぁ?」
そう考えていた矢先にアニスが自身を弱々しく見ながら漏らした疑問の声に、ルークは意味が分からないと言うよう声を上げる。
「別に俺にお前の行動を止めようとする権利なんてねーよ。それにお前も自分で行かないって選択したんだろ?なら俺がお前を止めなきゃならねー理由はねーよ。尚更な」
「・・・そう、なんだ・・・戻れって言わないんだ、ルークは・・・」
「んだよ、戻ってほしいとか言ってほしかったのか?」
「そう、じゃないけど・・・・・・ううん、なんでもない・・・」
(なんだ?アニスは何か言いたいのか?ちょっと葛藤って言うか、そんな感じの空気があったように思うけど・・・)
そのまま止める気はないと言い切るルークにアニスは何か迷うな素振りから弱々しく首を横に振り、その姿に内心で何なのかと感じていた。
「・・・ねぇ、ルーク。ルークはここには一人で来たの?」
「は?・・・まぁ眠れねぇってだけで他の奴らを起こす程でもねぇって思ったしな。でもなんなんだよ、一体?」
「・・・このお金に関しては感謝するし、宿にも泊まる・・・だから一言言わせて・・・あの人達を信用しないで」
「へ?あの人達をって・・・」
「じゃあ私行くから・・・!」
「おい、アニス!・・・行っちまった・・・」
しかし再度決心したかのよう探りながらといったよう声を向けるアニスにルークは眉を寄せるが、いきなり静かながら決意と共に注意を投げ掛けてきたことに呆気に取られる。しかしその真意を聞く前にアニスは街の方に走り去って行き、ルークは手を伸ばすも留める事が出来ずにその後ろ姿を見送る形になった。
(・・・アニスが言ってたあの人達って、多分アドリビトムの皆の事だよな・・・でもどうしてアニスがあんなことを言うんだ・・・何かあったのか、一体・・・?)
そして少し冷静になって考えてみるが、その言葉がおそらくアドリビトムの面々を指していると感じて一層の疑問を抱く。









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