事態は予想出来ぬ道へ向かう

「・・・ねぇ、陛下がそんなこと決断したなんてショックみたいに言ってるけど・・・現実から目を背けすぎてない?」
「っ・・・アニス、それはどういう意味でしょうか・・・?」
・・・そして端から見れる者からすれば、思わず口に挟みたくなるような物である。
今まで黙っていたアニスが呆れているかのような目と問いを向けてきた事に、ナタリアは少しムッとしながら訳を問い返す。
「だってさ、インゴベルト陛下も承知の上で決断したんじゃん・・・私達って言うか、ルーク達をアクゼリュスに送ることを。なのにずっと父親はそんなことしないってばっかり言って、そうだって可能性についちゃ目を向けないどころか有り得ないって否定しかしなかったよね・・・それって信じるんじゃなくって、そうであってほしくないって願ってるだけじゃん」
「なっ・・・言っていいことと悪いことがありますわよ、アニス!」
アニスはその意味についてを自分の考えで口にしていくが、ナタリアはすぐに激昂して返す。
「それはナタリアから見て気分が悪い事なだけじゃん。それにアッシュだってこのままじゃまずいって思ったからナタリアの事を止めたはずだよ。インゴベルト陛下達の事を考えてないって思ってさ」
「っ・・・そう、なのですか・・・アッシュ・・・?」
「・・・ただやめろと言っても無理だと思ったのは事実、だ・・・」
「っ・・・!」
だがアニスがアッシュを引き合いに出したことにおそるおそると確認するが、気まずそうに目を反らしながら肯定の言葉が返ってきた事に戦慄したよう体を粟立たせる。
(アッシュ・・・まさか貴方がそんなことを思ってたなんて・・・)
その光景にティアは信じられないと言う気持ちを抱く・・・が、これはある意味アッシュとしては当然なのだ。ヴァンから真実を知らされた形とは言えインゴベルトに公爵の真意を知ったアッシュからすれば、無条件に二人の事を信じるような事は出来ないのは。だからこそ無条件にインゴベルト達を信じても裏切られると確信し、ナタリアをアッシュは止めたのだ・・・けしてアッシュからして無意味にナタリアを傷付けたかった訳ではないし、ましてやアニスのように呆れて言った訳ではないのだ。
「・・・アニス、どうしていきなりそんなことを・・・」
「・・・一緒に行かないって決めたけど、これは言わなきゃいけないって思ったから言ったんです。下手したらナタリアのせいでこっちまで危険な目に会うんじゃないかって」
「だからってなんでそんな言い方を・・・」
「だったらイオン様はナタリアの考えは甘くなかったって言えるんですか?私が言った事を聞いて」
「っ・・・そ、それは・・・」
そこに今度はイオンがアニスを半ば批難するように声をかけるが、言い方云々より事実を考えるように問い返された事に瞬時に言葉を詰まらせた。
「アニス・・・どうしたのよ、一体?貴女はそんなことを言い出すような人じゃなかったでしょう・・・(本当に何があったというの・・・)?」
「・・・今言わないともう言う機会がないって思ったからだよ」
「え・・・?」
そしてとうとうティアが心から何故という気持ちを押さえきれずその心中についてを問うと、予想していなかった答えに戸惑う。まるでもうこの場にいる皆とは最後と言わんばかりの言い方に。










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