事態は予想出来ぬ道へ向かう

「・・・やはりルークにガイも呼ぶべきではないでしょうか・・・」
「フン!ガイだけならいいが、あの屑なんざ来る必要ねぇよ!」
「アッシュ・・・」
アドリビトムの面々がいない場でイオンが視線を別の部屋に向けながら二人についてを口にするが、アッシュが吐き捨てるように声を上げる姿にナタリアが複雑そうに表情を歪める。



・・・さて、この部屋に何故ティア達が集まっているのかと言えばアドリビトムの面々がいなくなった後にナタリアがアッシュの所に行くと言い出し、それにティアも乗っかったからである。一人で部屋に残されるよりはと。



(はぁ・・・本当にアッシュは全く変わってないのね。ルークに対する考えは・・・)
その光景を端から見ていたティアは内心だけでタメ息を吐くが、表情もハッキリとうんざりとしていた。面倒くさいと。
「・・・すみませんアッシュ、聞いてもいいですか?」
「なんだ、導師?」
「もしその、ヴァンがアクゼリュスを落としたのが本当だというのなら・・・ヴァンが何を狙っているのかは予想はつかないのですか?その・・・貴方とルークの事を考えると、ヴァンが何故そうしたのかと思ってしまうのですが・・・」
「・・・さぁな。あの野郎の考えなんざ知ったことじゃねぇ。大方あの屑と俺が二人ともいなくなったことで焦ったんだろうよ。下手に時間をかければモースの疑いの目がかかることを面倒に思ってな」
「・・・そうですか・・・」
そこにイオンがアッシュにヴァンの狙いについてを気まずそうに口にするが、少し投げやり気味にわからねぇと返された事になんとも言い切れない表情でうつむく。
「ですが私はどうしても信じられません・・・お父様がそんなことをするなんて・・・」
「ナタリア・・・」
「・・・やはりバチカルに手紙を出しますわ!出さない方がいいというような空気になっていましたが、私が出せばピオニー陛下も・・・!」
「やめろナタリア・・・無駄だ」
「アッシュっ・・・何故貴方がそう言うのですか・・・!?」
そこにナタリアが未だ信じられないとインゴベルトに対する気持ちを漏らし扉に向かおうとするが、アッシュがすぐに肩を掴み真剣な面持ちで首を横に振った姿に何故と漏らす・・・キムラスカを信じないのかといったニュアンスで。
「・・・ヴァンからの話ではアクゼリュスに俺の件は、俺が産まれてから少なくとも数年の内に明かされていたとの事だ。そしてそれは叔父上だけでなく父上にも話をされていて、どちらも了承した上で預言の達成をする事を選んだんだ」
「っ!?・・・そんな、まさか・・・!?」
「・・・信じたくないという気持ちは分からなくはない。だがこれはヴァンから聞いた事実であり、だからこそあの屑を屋敷から出させないようにしたんだ。預言に詠まれた『ルーク』という存在をアクゼリュスの消滅まで守る為にな」
「っ!・・・そんな・・・初めからお父様達はそうすると、決めていたなんて・・・」
・・・しかし事ここに至ってようやくナタリアも現実を知った、インゴベルト達は苦渋の決断をここ最近で行ったのではなく既に大分前に知っていて決断をしたのだと。
相手がナタリアであることでアッシュも静かでいて確かな根拠をゆっくり語ると、流石に受け入れざるを得ずに顔色を青くした。
(ナタリア・・・辛いわね・・・改めてその事実を突き付けられると・・・)
その光景にティアは表情には出さないが、内心で同情をする。



・・・一見何も知らない者が中身を知らずにこの光景だけを見ていたなら、ティアのように同情をするかもしれない。が、アッシュの言ったようなことをナタリアが全く考えていなかった事をティアは引っ掛かりもしていなかった。信じるからこそ信じたくない・・・そう考えたくないと疑うまではいかずとも思考を働かせる事をナタリアが放棄していた事に。

そう考えると仲間と思うからこそ目が曇るティアはともかくとしても、端から見ればナタリアが全く冷静に物事を考えられていないのは火を見るよりも明らかであった。











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