事態は予想出来ぬ道へ向かう

「それによ・・・正直名前だけじゃなく、今の俺はどんな立場にいるのかすら分からねぇんだ・・・『ルーク=フォン=ファブレ』なのか『ルークの偽物』なのか、それとももう何者でもねぇのかとかも・・・」
「っ・・・ルー、ク・・・」
そこに畳み掛けるように自分は何者なのかと自問自答するかのよう声を漏らすルークに、ガイは手を伸ばしかけて躊躇いに手を引く。下手な言葉は逆効果とも感じてしまうようなただならなさに。
「・・・名前も立場も今の俺は自分の物だなんて言えねぇし、これからそれがハッキリとするのかどうかもわかんねぇ・・・答えがあることかどうかってのもあるけど、もしかしたら俺が死んじまうってこともあり得るしな・・・」
「っ!?・・・そ、んな・・・そんな、ことは・・・」
「ない、なんて言い切れねぇだろ・・・生きるか死ぬかに関しちゃ俺だけの問題じゃなく、他の奴らにも降りかかってくる問題だ・・・これからの事を考えるとキムラスカやダアトとかもそうだけど、師匠達が相手ってんならどうなるかわかんねぇだろ・・・本当によ・・・」
「・・・っ!」
更に現実を突き付けるとばかりにルークが更にこれから次第で自らも含め死ぬ可能性があると、さりげにヴァンの存在も揶揄しながら言うとガイはたまらず手を口元に持っていった・・・驚きに恐れを口から出すのを必死に抑えるよう。
「・・・ガイ、お前がこのままじゃいけないって思う気持ちは分かる気はする・・・けど今の迷ったまんまだったら来んな・・・お前が迷う理由は行きたいって思う理由があるのと同じくらい、行きたくないって思う理由があんだろ・・・だったら来ない方がいい・・・俺と違ってお前にはまだ・・・選べる道があるんだからよ・・・」
「っ!」
そしてとどめとばかりに顔を横に背けながらお前と自分と違うと告げるルークに、ガイは襲撃にヨロヨロと首を振りながらたたらを踏んで後ろに下がった・・・否定をしようにも否定が出来ないと自身の中に今後の人生を復讐に費やすべきかとガルディオスとして活動するべきかという迷いに選択肢があることが、自我を確立するためにヴァン達に立ち向かうことを選ばざるを得なくなったルークと精神的に大きな一線を画する状態になったと感じてしまった為に。
「・・・俺から言えることはもうこれまでだ。俺はちょっと寝るから起こすなよ」
「っ・・・ルー・・・ク・・・」
(ふぅ・・・これで一先ず成功か・・・まぁダメならダメでガイの感じならしばらく迷ってるだろうし、そこでなんとかしよう)
そして視線を合わさず近くのベッドに行くルークの後ろ姿にか細く声を上げ視線を向けるしか出来ないガイだが、枕に顔からダイブした当人は一仕事やり終えたとホッとしていた。
(後はガイがどう考えて結論を出すかだけど・・・多分俺達がどうにかしてキムラスカに戻れるって時がくるのが早ければ早いほど、ガイはキムラスカに戻ることを選択する可能性が高いよな・・・ただそんな簡単に事態が解決する気はしないけど、そんなことになる前にどうにかしないとな・・・)
そのままルークはガイが最終的に選ぶ選択についてを予想するが、ファブレに戻すことだけは避けたいと考える。やはり元々の目的が目的なだけに。









・・・そんな風にルークがガイについて詳しく考えていた頃、残りの二つの部屋の一つにティア達は集まっていた。








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