かつての始まりは既に変貌している

(俺の事を知ってる?・・・まぁ全く名前が出てないから知られてない訳じゃないだろうしジェイドも知ってたから別におかしくはないけど、どうなるにせよ居心地悪いなこれは・・・)
対してルークは驚きはしていたがそれは隠しつつ、どうしたものかと考えていた。自分達に周囲から向けられる視線が、どんどん強まっていると感じた為に。
(欲を言えばもうちょい色々動きたい所だけど、変に目立つとそれこそ変な流れになりかねないな・・・多分展開として一番最悪なのはここで『ルーク=フォン=ファブレ』だってジェイドに聞かれて騒ぎになって見つかって、即刻タルタロスに連れていかれる事だ。そうなったら多分今日にはもうエンゲーブを離れることになる・・・それも強制的に・・・)
その中でルークは最悪の可能性を考え、焦りを覚えていた。前と違う流れは歓迎するが、これが騒ぎになれば有無を言わさずジェイドに自分の事がバレてしまい前よりいびつな関係の始まりになりかねない上に、妙な流れになりかねない・・・そんな流れは無理だと。
(仕方無い、もうさっさと宿に行くか・・・これ以上動いても何にもなりそうもないしな)
「だったらなんだっつーんだよ・・・つーかどけよ。さっさと休みてぇんだ」
「ちょっ、ルーク・・・!」
そうと決まればとルークは不機嫌にジュディス達を押し退け、ティアの声も気にせず宿の方へと向かう・・・









(・・・なんでだ・・・)
・・・だが宿に入ってもルークの思うようにはいかず、仕方なく不機嫌そうにベッドの枕に顔を埋めてうつ伏せで寝る以外に出来なかった。
(まぁ向こうも旅をしてるからそうなるのも当然っちゃ当然じゃあるんだろうけど、だからって一緒に宿に入らなくてもいいだろ・・・)
ルークがそうする理由。それはルークが宿に入ってさぁ一段落・・・といった時にアドリビトムのメンバーも中に入って宿に泊まると受付をしてきたからだ。これには付いてくるなと一応文句を言いはしたが、僕達も宿に泊まりたいから来ただけだとクレスに言われてしまえばそれ以上は何も言えなくなった事から、ふて寝という形でルークは会話を避けたという訳である・・・アドリビトムの面々とあまり長く顔を合わせたくはないといった気持ちもあって。
(・・・つーかよく見たらアドリビトムのメンバーじゃない奴も何人かいたよな・・・現にティアと話してるのも誰か俺わかんないし・・・)
しかしそんな思考はさておきと寝た状態のままルークは思考と耳に意識を集中させる。ルミナシアでも会ったことがない人物が今ティアと話してる会話に。



「・・・貴方達、ルークの事を知ってるの?」
「えぇまぁ、予想はついてますよ。あの方の髪と眼の色、そして着てる物に佇まい・・・それらがキムラスカの重鎮であるファブレの家の子息の『ルーク=フォン=ファブレ』殿であることくらいは」
「・・・っ!」
ルークが意識を傾ける中、ティア一人と何人かのアドリビトムのメンバー(何人かは壁に身を預けていたりベッドに腰をかけている)という構図でテーブルを挟んで対峙している。そんな中でティアの警戒が滲んだ目と声に、ルークは名前を知らないが・・・ヒューバートが当然分かると眼鏡を押さえながら言った言葉に、ティアは悔しげに歯を噛む。
(迂闊だったわ・・・まさか大佐じゃなくてこんな訳の分からない誰かに知られるなんて・・・こんな世界になってなかったらルークの事を知られることなんてなかったのに・・・!)
それで内心この世界のせいだと八つ当たり気味にティアは口にするが、自身が決定打であったことを決してその事に目を向けることはなかった。
「ただこちらとしては何故そのような方がこちらにいらっしゃるのかという理由が分かりません。それもダアトの人間で神託の盾である貴方とこの敵国のマルクトという地で・・・どうしてこちらに貴女方はいらっしゃるのでしょうか?」
「・・・それは貴方達には関係ない事よ」
「・・・関係ない、ですか」
それでヒューバートが何故ルークと共にいるのかを聞くが、ティアは話す気はないと強い言葉で拒否を示す。ヒューバートはその言葉にまた意味深に眼鏡に手を添えるが、そこで脇に控えていたジュディスが笑みを浮かべながらティアの前に出る。








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