事態は予想出来ぬ道へ向かう

「・・・ただいま戻りました、陛下」
「あぁ・・・結果は?」
「・・・アクゼリュスを含めその近隣の地は消滅しました。今その地は大穴が空いて魔界の様子を遠くのダイクロフトの空からも眺められるようになっています」
「「「「・・・っ!」」」」
「・・・そうか」
戻ってきての挨拶もそこそこに早速と本題についてを問うが、ヒューバートの重い返答は無情な事実のみ・・・その答えに謁見の間にいた者達はピリついた空気になり、ピオニーはただ一言で事実を受け取ったというよう重く返す。
「・・・陛下、どうなさいますか?」
「・・・そうだな。ジェイド、キムラスカが仕掛けてくるとしたらどれくらいと見ていい?」
「っ、お待ちください陛下!まだキムラスカが戦争を仕掛けると決まった訳ではありませんわ!ヴァンが勝手に起こした事だと今なら私がいますから証明出来ます!」
その中でジェイドが今後についてを切り出しピオニーがキムラスカが仕掛ける前提で話をし出したことに、ナタリアが焦って噛み付いてきた。キムラスカがそんなことをするはずがないし、自分がさせないと。
「・・・殿下の気持ちも分からんでもないが、アクゼリュスが消滅した以上は最悪の事態を想定して然るべきだ。それにこちらからも一応キムラスカに対し、このあとすぐにアクゼリュスの住民の救出に殿下達の事実は伝える手紙を出す気ではいる・・・が、そこで向こうの返答がこちらの望むような物でなければ最早戦争は避けられん。俺はそれを踏まえた上で今の話をしている。殿下が望まないであろう結果になった場合の事も考えてな」
「っ・・・!」
だがそんな希望的な考えはあくまで希望に過ぎないと現実的に対応することを示すピオニーにナタリアはすぐに言葉を詰まらせる。そんなことはないと強く信じて否定出来ない事に。
「・・・お話の最中に失礼しますが、どう遅く見ても一月の内には戦争の流れになるのは間違いないと見ていいかと思われます。陛下の言われたような手紙を出されても何日か火蓋が切って落とされる時が遅くなるだけで、向こうを説得出来るとはまず思えません」
「だろうな・・・となればそれまでにどうにか向こうを止めなければ、戦争は避けられんということになるか・・・」
「「「「・・・」」」」
ナタリアが黙ったことでジェイドがそうそう時間はないことを口にし、ピオニーの言葉にまた謁見の間にいる人間の空気がピリついて重くなる。
「・・・とは言えだ。流石に今日明日で即刻開戦となるほど、向こうも準備は出来ていないだろう。となればまだ少しは時間が取れると見れる・・・」
「陛下・・・何を考えてらっしゃるんですか・・・?」
「いや・・・もう今日はそちらは解散してもいいかと考えていたんだ」
「っ・・・陛下、今はそんな事を言ってるような場合ではないんじゃないですか・・・!?」
ピオニーはそんな中で独り言染みたように声を漏らしイオンが何事かを聞くが、場を終わらせようとするような発言にどうしてかと声を荒くする。
「無論、俺も訳もなくそう言ったんじゃない。おそらくセントビナーかカイツール辺りから報告の書類は近い内に届くだろうが、アクゼリュスの件を知った今となっては有事に備えて先にどうするべきかとの命令を下す必要がある・・・目下戦場となる可能性が高いパダン平原に近いカイツールの兵達に防備の準備をさせる必要がな」
「・・・っ!」
「そちらとしてもこちらとしてもそんなことにしたくないとは思ってはいるだろうが、いきなり戦争となって大勢の兵士の命をみすみす失わせるような事態となるのは避けたい。その為にもこちらからどのような命令を送るのかより真剣に吟味する時間が必要だ」
「・・・そういうこと、ですか・・・」
ピオニーはその訳についてを説明するが皇帝としての顔を見せた上で命を優先すると言ったことに、イオンはそれ以上は反論出来ずに納得せざるを得なかった。大丈夫と言い切ってしまうことが出来ない現状で希望的な事を言えない無力さに悔しさを滲ませながら。







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