否応なしに変動する関係

「・・・アニスに関して言うと、モースさえ先にどうにか出来たならスパイの件はそれで終わりになることは有り得ると思う。それに今の状況ならアニスがスパイとして積極的に動くことはないと思うし、なんだったらここに残るって事も有り得なくないと思う。危険だって考えて自発的にってのもだけど、イオンが無理に関わるなって言う可能性もあるし・・・アニス自体はそこまで気にしなくていいと思う」
「アニス自体は?・・・んじゃ他に何か気になることでもあるってのか?」
「・・・皆は聞いてないか?・・・イアハートから、アニスの両親についての話を」
「イアハートって・・・なんかあいつから聞いたのか?」
ルークはそのままアニス自体はまだいいと言うが、その言い方にスッキリしないとスパーダが疑問を向ける。ルークはそこでイアハート・・・ルミナシアにいた時にグラニデという異世界から来たカノンノの話と言い、スパーダ達は首を傾げる。
「あ~、皆は聞いてなかったのか・・・なら多分これは俺だけが聞いたことだと思うけど、グラニデでのアニスの両親もここと同じように借金したりしてたらしいんだ」
「はっ?初耳だって言う前に、なんでそんなこと聞いたんだよお前?」
「ちょっとグラニデの俺の事とか気になったんだ、そっちでもアッシュとの仲が悪いのかってさ。それで向こうの俺と態度が違うって戸惑いながら話すイアハートから色々聞いてったんだけど、そこでアニスが行方不明になった時の話から両親がこっちと同じように借金をして、アニスがそれを抱え込んでたって聞いたんだ」
「はぁ?・・・マジかよ・・・」
その反応にルークはイアハートとどんな話をしたのかと共にアニスの事も聞いたと言い、スパーダはまた意外そうに目を瞬かせる。
「詳しい中身については省かせてもらうけど、アニスの両親は世界を越えても人の為にお金を使うことについて全く疑問を持たないんだ。そして今のままだったらアニスはモースのスパイから離れることが出来たとしても、両親の借金についてずっと悩んだままだと思うんだ」
「・・・確かに、そう聞くとアニスちゃんのことは解決しないといけないかもしれませんね・・・」
「そうね。それにモースのスパイじゃなくなったとしても、誰かが後を継げばその人物がスパイになることも有り得るでしょうし」
ルークはそこから両親の善意がアニスの悩みの種になると予想し、ミントの辛そうな声にジュディスは更なる危機も有り得ると可能性を示唆する。
「そういうことならアニスについても考えなければならんのだろうが・・・ルミナシアのアニスももしや同じような物だったのか?その辺りはアドリビトム内で片鱗しか見ていなかったからハッキリしないのだが・・・」
「あぁ、初めて会った時に俺の家のこと知って露骨に態度変えたなアニス・・・」
ユージーンもその危惧について納得するが、ルミナシアのアニスについてを聞くとスパーダも当時を思い出す。貴族の息子と知った時のアニスの露骨な豹変ぶりを。
「・・・ルミナシアのアニスの両親も、大方同じような感じだと思う。実際に会うことに話すことは難しかったから出来なかったけど、ジェイドとかにもさりげなく話を聞いてそうだって俺はそう判断した」
「やっぱそうなのか・・・でもそれでお前はどうにかしようって出来なかったのか?その両親の事に関してはよ」
「・・・それについてはスパイとかの問題がパッと見て無かったってのもあったけど、それ以上に単純な手段じゃあの二人の心変わりを望めないどころか場合によっちゃより状況が悪くなることも有り得るから手を出すのは止めようって思ったんだ・・・下手に借金を肩代わりするとかしたら、あの二人はまた別に借金をして元の木阿弥どころの問題じゃなくなるって可能性もあるってさ」
「うわ・・・そう考えっと簡単には手は出せねぇよな、そりゃ・・・やったことが無駄になるどころか、一層被害が大きくなるばかりだろ・・・それで話に聞いた両親の考えからすりゃ恩を仇で返したって認識じゃないどころか、その分をまた別の人に渡せるようになるとか思いそうだよな・・・」
ルークはアニスの両親に関して知ってはいても手は出さなかったと理由も語りながら告げ、スパーダも苦虫を噛み潰したような顔で納得する。アニスの両親は悪意を全く見せることなく、ルークの気遣いを配慮することなく無駄にしかねないことを感じて。










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