否応なしに変動する関係
「・・・失礼します」
「・・・あ、どうしたんだい?」
「食事をお持ち致しました」
「すまない、ありがとう」
・・・時刻は夜。ガイの部屋に腰にかかるほど髪の長い銀髪の女性がトレーに食事を乗せて入ってきたことに、ガイは考え込んでいた様子から笑顔で返す。が、トレーを近くのテーブルに置いた女性の姿にガイは途端に不思議そうに眉を寄せる。
「あれ・・・君の事は見たことがないな・・・?」
「・・・このダイクロフトには地上に降りない人もいます。貴殿方と一緒にいる人達とは違い。私もその中の一人ですが、彼らが忙しいということで彼らの代わりに食事を持ってきたんです・・・」
「そうだったのか・・・」
そうなった理由は相手の女性に見覚えがないからなのだが、女性が何処と無く視線を背けながら返す様子にガイは納得しながらもまた眉間にシワを寄せる。
「・・・でもどうしたんだい?何か辛そうに見えるんだが・・・」
その疑問の元はどこか影を思わせる振る舞いで、女性の扱いに慣れているガイは言ってみてほしいとのニュアンスで声をかける。
「・・・すみません、アクゼリュスの事に住民の方々の事について聞いて少し動揺してしまって・・・」
「・・・どうしてなんだい?ここの人達はそう言った事には寛容と言うか、慣れているといったように思うんだが・・・」
「・・・私は元々からこのダイクロフトの住民という訳ではありません。出身は、その・・・ホドですから・・・」
「っ!?・・・ホド・・・!」
女性は首を振り浮かない様子ながらも答えを返していくが、極めて言いにくそうに紡がれた単語にガイは驚愕した・・・同じホド出身の人間と聞き。
「・・・私はホドが消滅した時、このダイクロフトの方々に助けられ今までここで暮らしてきました。他にも何人かいますが、その時の事に加えて下が預言を重視していて暮らしているのだと思うと・・・私も含めてもう、下に戻れないんです・・・それで下の人に会ったのも久しぶりで、それで・・・」
「・・・だから、緊張してしまったと・・・」
「はい・・・」
女性はガイとは目線を合わせないようにしつつも、自分に周りの人間についての状況を精一杯に話していく。ガイの表情が辛そうに歪む中、女性はチラリとその顔を見てから更に言葉を紡ぐ。
「・・・貴方が私に対してどう思っているかは分かりません。ですが部屋に入った時に貴方が何かに悩んでいる姿が見えました」
「っ!・・・あ、あれは・・・」
「・・・そう思い悩むくらいならここに残るか、グランコクマに亡命されたらどうですか?・・・彼らから話を聞きましたが、その様子だと貴方にあえて命をかけてまで下に戻らないといけないと思える理由はないと思いました」
「っ・・・!!」
そこから女性が力ないながらも紡いだ言葉に、ガイは何かを返そうとしたが言葉を詰まらせた・・・悩むということは命を天秤にかけてまで行う価値はないのではないか、復讐もヴァンに真意を伺う事も・・・女性が意図していない発言とは言え、そう投げ掛けられたのではと感じてしまったことで。
「・・・戦争はもうたくさんです。あんなこと、起こらなければいい・・・ですが私には彼らと違ってそれを止めるだけの行動力に決断は出来ません、そうすると考えただけで怖いんです・・・自分が死ぬこともですが、自分のせいで自分のような人を作るんじゃないかと思うと・・・」
「そ、それは・・・」
「・・・すみません、色々と言い過ぎました。私はこれで失礼します・・・では・・・」
「ぁっ・・・」
そのまま女性は自分の体を抱きながら独白をしていくが、ガイの動揺混じりの言葉に申し訳なさそうに謝った後に足早に部屋を後にしていく。ガイは手を伸ばし止めようとするが、足も声も手と同様に大きく出ることはなく女性の姿は扉の向こうに消えた。
「・・・・・・くそっ・・・俺は・・・俺は、どうしたらいいんだ・・・」
一人部屋に残ってしまったガイは女性を追いかけることも出来ず、悲痛な表情を浮かべながら下を向いた。予想だにしなかった出会いで、自身の迷いを更に深める姿を見せられたことで。
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「・・・あ、どうしたんだい?」
「食事をお持ち致しました」
「すまない、ありがとう」
・・・時刻は夜。ガイの部屋に腰にかかるほど髪の長い銀髪の女性がトレーに食事を乗せて入ってきたことに、ガイは考え込んでいた様子から笑顔で返す。が、トレーを近くのテーブルに置いた女性の姿にガイは途端に不思議そうに眉を寄せる。
「あれ・・・君の事は見たことがないな・・・?」
「・・・このダイクロフトには地上に降りない人もいます。貴殿方と一緒にいる人達とは違い。私もその中の一人ですが、彼らが忙しいということで彼らの代わりに食事を持ってきたんです・・・」
「そうだったのか・・・」
そうなった理由は相手の女性に見覚えがないからなのだが、女性が何処と無く視線を背けながら返す様子にガイは納得しながらもまた眉間にシワを寄せる。
「・・・でもどうしたんだい?何か辛そうに見えるんだが・・・」
その疑問の元はどこか影を思わせる振る舞いで、女性の扱いに慣れているガイは言ってみてほしいとのニュアンスで声をかける。
「・・・すみません、アクゼリュスの事に住民の方々の事について聞いて少し動揺してしまって・・・」
「・・・どうしてなんだい?ここの人達はそう言った事には寛容と言うか、慣れているといったように思うんだが・・・」
「・・・私は元々からこのダイクロフトの住民という訳ではありません。出身は、その・・・ホドですから・・・」
「っ!?・・・ホド・・・!」
女性は首を振り浮かない様子ながらも答えを返していくが、極めて言いにくそうに紡がれた単語にガイは驚愕した・・・同じホド出身の人間と聞き。
「・・・私はホドが消滅した時、このダイクロフトの方々に助けられ今までここで暮らしてきました。他にも何人かいますが、その時の事に加えて下が預言を重視していて暮らしているのだと思うと・・・私も含めてもう、下に戻れないんです・・・それで下の人に会ったのも久しぶりで、それで・・・」
「・・・だから、緊張してしまったと・・・」
「はい・・・」
女性はガイとは目線を合わせないようにしつつも、自分に周りの人間についての状況を精一杯に話していく。ガイの表情が辛そうに歪む中、女性はチラリとその顔を見てから更に言葉を紡ぐ。
「・・・貴方が私に対してどう思っているかは分かりません。ですが部屋に入った時に貴方が何かに悩んでいる姿が見えました」
「っ!・・・あ、あれは・・・」
「・・・そう思い悩むくらいならここに残るか、グランコクマに亡命されたらどうですか?・・・彼らから話を聞きましたが、その様子だと貴方にあえて命をかけてまで下に戻らないといけないと思える理由はないと思いました」
「っ・・・!!」
そこから女性が力ないながらも紡いだ言葉に、ガイは何かを返そうとしたが言葉を詰まらせた・・・悩むということは命を天秤にかけてまで行う価値はないのではないか、復讐もヴァンに真意を伺う事も・・・女性が意図していない発言とは言え、そう投げ掛けられたのではと感じてしまったことで。
「・・・戦争はもうたくさんです。あんなこと、起こらなければいい・・・ですが私には彼らと違ってそれを止めるだけの行動力に決断は出来ません、そうすると考えただけで怖いんです・・・自分が死ぬこともですが、自分のせいで自分のような人を作るんじゃないかと思うと・・・」
「そ、それは・・・」
「・・・すみません、色々と言い過ぎました。私はこれで失礼します・・・では・・・」
「ぁっ・・・」
そのまま女性は自分の体を抱きながら独白をしていくが、ガイの動揺混じりの言葉に申し訳なさそうに謝った後に足早に部屋を後にしていく。ガイは手を伸ばし止めようとするが、足も声も手と同様に大きく出ることはなく女性の姿は扉の向こうに消えた。
「・・・・・・くそっ・・・俺は・・・俺は、どうしたらいいんだ・・・」
一人部屋に残ってしまったガイは女性を追いかけることも出来ず、悲痛な表情を浮かべながら下を向いた。予想だにしなかった出会いで、自身の迷いを更に深める姿を見せられたことで。
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