未知は絶望と希望をはらむ物

「ハイハイ、その辺りにしときなさいよ。そろそろマルクトの代表が来るかもしれないんだし」
「分かってるよ・・・つっても今すぐ結論を出すべきじゃねぇだろ。この問題についちゃな」
「・・・貴方、何を言っているの・・・?」
ルーティがその空気をたしなめるように仕方なさそうに声をかけるが、答えつつもユーリが漏らした言葉にティアは不機嫌さを残しつつ訝しげに意味を問う。
「その様子から見てあんたはどうするのかって決まっちゃいるようだが、ガイ達は様子を見る感じじゃ考えって言うか決意が固まってる感じには見えなかったからな。だからちょっと時間が必要じゃないかって思ったんだよ。考える時間がな・・・で、どうだ?」
「・・・正直、時間が欲しいってのは確かだ」
「・・・私も時間は欲しいかな。大佐達の話を聞いてたらどうしようかって思っちゃったし・・・」
「なっ・・・!?(どうして・・・なんで二人はこんな風に弱った表情を見せるの・・・!?)」
ユーリはそう言った理由についてを話した後にガイとアニスに視線を向け問い掛けると、二人共に辛そうに目を伏せ時間が欲しいと漏らした声にティアは唖然とした。二人らしくないと。



(・・・これは仕方ないのかもな。ガイからすれば復讐に師匠の真意を探るどころの話じゃない状況だって思ってる所だろうし、アニスからすればスパイを続けるかどうかもそうだしオリバーさん達の事だけじゃなく、自分の命まで危なくなるかもしれないからどうするかを悩んでるんだろうし・・・)
一方、ルークはティアと違い二人の動揺の理由にあたりをつけていた。そしてそれは当然だろうとも思う形で・・・この辺りは未だかつての仲間という関係に囚われて物を考えるしか出来ないティアとのれっきとした違いと言えた。
「・・・まぁユーリの言うように二人には時間が必要なのは事実でしょうね。それに幸いにと言うべきか、明日までは時間がありますからそれまでに考えをまとめてください。今のまま我々と行動を共にしても二の足を踏むような事態になる可能性もあるかもしれませんからね」
「・・・あぁ、旦那」
「アニス・・・」
「すみません、イオン様・・・少し、考えさせてください・・・」
「・・・はい・・・」
ジェイドがそんな空気をまとめるように明日までに考えをまとめるように言い、ガイが神妙に頷きイオンがアニスに声をかけるがすぐに視線を背けながら弱く声を上げる姿に悲し気に頷く。
「・・・お待たせしました、カーティス大佐」
「いえ、ご苦労様ですフリングス少将。では早速まいりましょうか」
「・・・はい」
(ん?なんかフリングス少将浮かない顔をしてるような気がするけど・・・)
そんな場にちょうどよく後ろに兵士や化学者と言った様相の人員を引き連れたフリングスが来たことにジェイドは気にした様子もなく話を進めるが、返事をするその姿にルークはどこか浮かない様子を感じた。









・・・それでグランコクマを出て、ジェイのいる場所にまで来たルーク達はジェイの案内で装置のある場所に行き、再びダイクロフトに足を踏み入れることとなった。



「・・・全員来ましたね。では地上に置いた装置はしばらく撤収させていただきますが、下に戻ると言っていただければいつでも設置し直しますので安心してください」
「あぁ、心遣い感謝する」
「っ!?その声、まさか・・・!?」
それで全員がダイクロフトに来てジェイが注意をフリングス達に向けるのだが、唐突に一人の兵士が上げた声にルークを始めとして一同の目がギョッと見開かれる。そして兵士が兜を取ると、そこに現れた顔は・・・
「・・・何故そのような格好をしてまでこちらに来たのですか、陛下?」
「固いことを言うな、ジェイド。こっちの奴らの言い分からして俺が来るってなったら流石に拒否されそうだって思ったんだよ」
「・・・だからといって兵士に扮してまで来ないでください。流石に予想外です」
(あぁ・・・フリングス少将が浮かない顔をしてたの陛下が無理矢理付いてくるってなったからなんだ・・・)
・・・笑顔を浮かべる悪気の欠片もない、マルクトの皇帝のピオニーの顔だった。
ジェイドも眼鏡を押さえながら何故と聞くがそんな様子だけに脱力せざるを得ず、ルークもまたそう言うことかと脱力気味に納得した。










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