焔と予想外の想いが絡まる始まり

・・・しかし何故ティアがアリエッタの事に関して重きを置いていないのかと言えば、理由はある程度前のように進めたいという考えもあるがティアにとってはその実、ルーク以外の事は二の次という考えが強いからだ。

これは前々から言えることだが、ティアの考え方はこうと見定めたら他を振り返らず一直線に行く節が多々ある。そんなティアからしてみればルークは元々の目的もあり助け導く対象として最優先の対象となり、その次にかつての仲間達が来て以下に説得を諦めたヴァンを含めた他の面々になる。

それも全て複雑に考えようとせず、シンプルに分かりやすい答えだけを求めているが故だ。現に神託の盾という一兵士が称号を持ってないとは言え、貴族の子息であるルークに上から目線の態度を崩そうとしなかったことがいい証拠だ。本来なら軍属の人間ならそうするのが普通であるのにだ。これはいかに神託の盾所属ということにかこつけるティアが貴族の子息程度と見ているのかが分かる態度と言えよう。自分の判断基準の中で。

・・・故にその判断基準内でアリエッタやライガの事はティアの中で二の次になっていた。ルークを救い、教育することに熱がいってしまうことで。












・・・そんな互いの思惑など知るよしもなく、辻馬車は数時間後にエンゲーブへと辿り着いた。



「「・・・」」
辿り着いたのだが、辻馬車の御者と分かれてから二人はあることが気にかかり二人ともに多少呆然としていた。それは何かと言えば・・・
((宿に人だかりが出来てない・・・?))
・・・そう、前にあった食糧盗難事件における人だかりがないことにである。
むしろ騒ぎなど始めからなかったかのよう穏やかな村の様子に、ティアは何故と顔をしかめる。
「・・・あ~~~、だっりぃ・・・さっさと宿行こうぜ、もう休みてぇ・・・」
「ちょっ、ルーク・・・!」
(・・・何が起こってるか分かんないけど、とりあえず宿に行こう・・・それからティアと分かれて色々調べよう、じゃないとやりにくいし・・・)
しかしルークは気だるげに振る舞ってさっさと歩きだしティアがその後を焦って追い出すが、その心中ではこれからの事を考えていた。どうなっているのかを気兼ねなく、自分一人の目で調べるために・・・






(・・・どういうことよ、これは・・・?)
そして宿を取り部屋も取った所であっさり宿に入れたこの状況に、ティアはベッドに腰掛けながら改めてなんなのかと考えを巡らせていた。
(どうして食料盗難の事件が起きてないのよ・・・本当に事件が起きてないなら、ミュウ達に会いにも行けないじゃない・・・このままじゃどうにもならないわ・・・どうにかチーグルの森に行くように考えないと・・・!)
それで考えるのは盗難事件の事もだが、この流れでどうチーグルの森に行くかと言うこと・・・この事に関してはティアにとって重要な事柄であった。ソーサラーリングを用いた仕掛けを解くにはチーグルが必要なのと共に、自身の癒しでもあるミュウをどうにかして連れていかなければならないために(尚ティアの中のどちらが重要かの比重は後者の方に大分傾いている)。
「・・・ほっといたほうがよさそうだな」
ただそう考えることに没頭する姿を見て、ルークは小さく声を上げ一人そっと部屋を後にしていった。その事にティアは気付けないまま・・・









「・・・ん~、全く村の中は騒ぎになってないな・・・」
それで宿を出て散策を開始したルークは一通り村の中を見て回り村の外れに来た所で確認は終わりと、頭をかく。
「どうすっかな~・・・チーグルの事もライガの事も気になるけど、だからってチーグルの森にまで行くのも不自然だし・・・宿に戻って考えるか・・・」
そして独り言を漏らしながら宿に戻らんと足を運ぶルークだが、ティアと似たような悩みであるのにこちらには追い込まれているような空気がない・・・これはルークは前よりよければそれでいいというある意味で楽観的な考えで、ティアはまだ前の通りに出来る限り進みたいという強迫観念からの差であった。






「・・・えっ・・・っ!?」
それで宿の見えるところまで戻ってきたルークだが、そこに見えた光景に次第に唖然として目を見開き立ち止まっていた。
(なんで・・・あいつらが、いるんだ・・・!?)
宿の前、そこにいたルークが心の中で呟いたあいつらとは・・・メンバー全員ではないとは言え、ルークが知っていてかつこの世界にいるはずのないアドリビトムのメンバーがそこにいた・・・












かつてをより良き物へ



そう思う焔の前に現れた異郷の仲間達



深淵の変革は既に始まっている・・・



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