再出発の時、一方ならぬ時

『では何人かはここに残るからしばらくゆっくりしていてくれ』
「あぁ」
ニアタはそんなルーク達に声をかけユージーンにカロルとウィルとすずが場を離れ、ガイが返答を返す。その中でティアはルークに対し複雑そうにしながらも、何も言えずに視線を向けていた。






『・・・とりあえずはアッシュの同行が決まったことはよしとしようか』
「そうだな」
そして近くにあった部屋に入ったニアタ達は確認の会話をする。
「しかしカロル・・・まさかお前からあぁ言った言葉が出るとは思わなかったぞ」
「いや~・・・何て言うかあそこで聞かなきゃいけない気がしてさ・・・」
ウィルはそこでカロルに視線を向けて意外だと声をかけ、頭をかきながら答える・・・実際ここにカロルが来たのは自分の意志からではなく、ウィルに肩をそっと叩かれたから何かあると付いてきたのである。
「どうして聞かなければと思ったんですか?」
「う~ん・・・僕はアドリビトムの中でティア達と交流した訳じゃないし、今どう考えてるのかって聞いてみたかったんだ。それで聞いたんだけど・・・もしかして、何かまずかったかな・・・?」
「いや、逆だ。むしろこちらからして嬉しい誤算だったからな」
「え?」
すずがそこで再度確かめるように理由を聞くとちゃんと答えはするが、その追求に怒られるのではと不安げな表情を浮かべる。だがユージーンから嬉しい誤算と返ってきた事にカロルは目を丸くした。
「何の事か分からないようだから言うが、ティアが一人ガイ達と違う立場にいることは分かるな?」
「うん・・・ルークを助けにって言うか、自分の為にルークを求めてって感じだったんだよね・・・あのティアのいた時間帯のローレライによると・・・」
「そうだ。そこで一つ聞くが何故ティアは一人でこの過去に戻ってきたと思う?ここは一人でという所に注目してくれ」
「一人で・・・?」
ユージーンがその後を継ぎカロルと会話をするが、意味深な問い掛けにカロルは眉を寄せる。
「・・・多分だけど、ジェイド達が賛成してくれる訳がないって思ったからかな?」
「うむ、それもあるだろう・・・だが俺はジェイド達を巻き込むわけにはいかないと思った気持ちもあると見ている」
「・・・それが、どういうことなの?」
「・・・先程お前の問い掛けを受けて最後に答えた時のティアの反応を覚えているか?カロル」
「うん、僕が質問したからそれくらいはね。でもなんであんな風になったんだろう・・・」
少しして考えた答えを述べるカロルにユージーンが補足を入れながら話を進める中、ティアの反応について聞かれて頷くのだがすぐに首を傾げる。
「それが俺の言いたいことなんだが・・・おそらくティアはジェイド達に対する認識違いを起こしている。勘違いと言ってもいい」
「勘違い?」
「あぁ、ジェイド達は自分の仲間で自分は仲間の事は何でも分かっている・・・そしてそれは相手も同様、という勘違いだ」
「・・・どうしてそう思うの?」
ユージーンはそこで肝心の答えを勘違いと言うのだが、カロルは今一つ理解出来ずにまた首を傾げる。
「話を聞く限りではティア達はヴァンを倒した頃には仲間意識を持つようになっていたのだろう。普通なら昔を思い返せばあの頃の自分達は今ほどの関係ではなかったと思うだろう。ローレライの話を聞いた時にな。それはカロル、お前がユーリ達と初めて会った時を思い出してもそうではないか?」
「・・・うん、確かにそうだったな・・・最初に会った時の事を思い出したら確かに今とそうは違わないように最初から接してきたけど、昔の方はちょっと今ほど穏やかじゃなかったな・・・」
「そうだろう。俺もアニーやヴェイグ達と今に近い関係を築けていないどころか、むしろ険悪な時もあった。そうやって昔を省みれば今となってはいい思い出、として見れることも多いが・・・あのティアの反応は昔を全く省みてないように思えたんだ。ジェイド達がそういった事を言うと思っていなかったとでも言わんばかりの反応はな」
「あっ・・・!」
昔と今を比較・・・自分の事も含めて考えるように言われ思い出すよう頷きながら答えた声に、ユージーンが更に告げた推測にカロルもその考えに至りハッとして声を上げた。確かにそう見えたと。









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