再出発の時、一方ならぬ時

「・・・まぁ俺としちゃ謡将とそれなりに仲良くさせてもらったってのもあるから、複雑な所はあるな。それに正直、もっと気になる所があるっていうのが本音なんだ・・・今の俺は・・・」
(そんな、ガイまで・・・!?・・・確かに今のガイならルークとアッシュの事で板挟みになって複雑だというのはわかるけれど、どうして・・・!?)
更にガイが自分の心中を表情を暗く落として話す様子にティアは何故と混乱する、どういうことかと。
「・・・フン、んなことを一々言う義理はねぇと言いたいがどうせ俺はもうヴァンの元に戻るつもりはねぇ。俺は奴の企みを止めてぇから奴の所を離れた。預言に詠まれた戦争に関しちゃそのついでに止めりゃいいって程度にしか考えてねぇよ」
「アッシュ・・・」
「・・・そんな目で見るな、ナタリア。やるとなったからには俺も一緒に戦争を止めてやる」
「っ、ありがとうございますアッシュ・・・!」
「っ・・・」
それで最後とばかりにアッシュが自分の考えを明かすが、ナタリアの悲し気な目と声にすぐに声色を少し柔らかくしながら返す。ナタリアはすぐに感激したように頭を下げるが、ガイはその光景に一瞬眉間に多大にシワを寄せた。
(・・・アッシュはともかくとしても、他の皆はどういうことなの・・・あの時は皆こんなにバラバラじゃなかったじゃない・・・!?)
そんな光景にアッシュらしさを感じはするが、意志の統一が全く感じられない答えの数々に前と違うとティアの頭の中には自身の悲壮な声が響き渡る。



・・・ティアは認識を誤っていた。いや、正確にはティアだけでなくかつての未来でのジェイド達にも言えることだが、ヴァン達を共に倒し世界を救ったという事実により忘れてしまっていた。かつての自分達の関係は初めから良好な物だったとは言えないどころか、一歩間違えればパーティー離散の危険もあった関係だったということも。

しかしそんな風に離散しなかった理由として大きいのは下手に離ればなれになった時に命を失う危険性が高かったことや、各々の目的の為に協力した方が都合が良かったという打算的な部分があったこともある。

ナタリアにイオンはまだ目的や性格に裏がなく友好的な事から一行の中ではマシな部類に入るが、他のティアも含めた面々に関してはバレてはならないと思う事実を抱えていたり内心で排他的な考えを持っていた・・・例としてガイを上げるとガルディオスの事実を隠していた事に加え、ユリアシティで復讐心を我慢出来ず公爵に剣を向けた事実があるのだ。本来なら危険人物として即刻取り押さえられた上で厳罰を下されてもおかしくなかったのだが、それは場の空気もあって何の罰を与えられることなく終わった。これは様々な流れの上でかなりガイにとっていい流れが来たからこそそうなったのだが、元々ガイはその事を言わず最悪の場合はファブレを滅ぼそうと心に秘めていた。

そして個人の違いはあれ、ティア達も秘密を持っていてそれを言うまいとその事に関して排他的な考えを持っていたのだ。そんな一同が一緒に離散することなくいられたのは先に言った部分があるのも事実だが、その実は・・・ルークを悪者、もしくは下の立場の存在と共同で認識していた部分が一番大きな理由と言えた。各々が抱える多少なりの罪悪感であったり事情は、ルークがアクゼリュスを消滅させた事実に比べれば・・・そう言った気持ちを抱くことにより自身の中に安心感を生むと共に、ルークを除いた一同の一体感を生んでいた。共にルークより上という立場にいるという一体感を。

だがティアはルークに対してそんな認識はしていないと言う上に認めないだろうし、自分達が共にヴァンを倒した仲間で全て理解していると夢を抱いているからこそ勘違いしていた。仲間達は自分と同じなのだと・・・だが今の状況は前と違うのだ、アドリビトムの面々が動いていることによって。










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