焔と予想外の想いが絡まる始まり

・・・それで辻馬車の御者と再び会ったルーク達だが、ここでルークは以前と違う状態にせんと行動する。



「・・・首都までは一人12000ガルド、二人で24000ガルドだよ」
「金ぇ?・・・屋敷に着いてから払うんじゃ駄目なのかよ?」
「先に払ってもらわないと乗せられないな。こっちも商売なんでね」
「ちっ・・・しゃあねぇな・・・金なんざ持ってねぇからこれでいいか?」
・・・以前の馬車に乗るための金を払う際のティアの形見の宝石を渡す場面を変えようと思っていたルーク。
金額を告げられ首都についてからで駄目かと確認を取り否定を返され、ルークはめんどくさそうに懐から宝石を散りばめられた見事な細工の施された銀の腕輪を取り出す。その姿をティアは目を見開き凝視して、止まっていた。
「ほう、これは・・・中々の物だ」
「それで足りるか?」
「いいだろう、これだけの物なら運賃には十分だ・・・わかった、準備が出来たら声をかけてくれ」
「あぁ」
御者の満足そうな姿に確認を取れば了承が取れて準備をするように言われルークは頷き、馬車の方に向かう御者を見送る。
「・・・ルーク、貴方あれは・・・」
「あ?・・・なんか知らねぇけどクリティア族、だったか?そいつらが作った腕輪だっつーのを父上が持ってたから、俺が欲しいっつってもらったんだよ。なんか珍しかったからな。ま、あんなもん父上に言えばまた手に入るだろうから別に惜しくもねーし、さっさと帰りたかったから渡したんだよ」
「っ・・・そう・・・」
(・・・どうやら誤魔化せたようだけど、なんかティア妙な感じだな・・・?)
そこでティアが腕輪の事について聞いてくるが、ルークは事実半分で嘘半分(事実は父上から譲り受けたで、嘘はクリティア族と言えば物珍しいと言い訳として使えるから)の前々から考えていた当たり障りのない言い訳を気楽に口にする。ティアは一瞬間を空けたものの納得するが、ルークはその間に違和感を覚えた。



(クリティア族・・・変な所で違いが出たわね、もしかしてルークの性格が変わったのかと思ったけれど・・・このわがままな姿だとそれはないわ)
対してティアは・・・ルークの嘘を完璧に真に受けていた。それがルークのさりげない配慮とも気付かず。
(一体なんなのかしら、クリティアだとかエルフだとか・・・ガ、ガジュマはまだいいけど・・・まぁいいわ、こちらが用意したお金を払わずに済んだのだから)
それで他種族に対しての存在の疑問を心に浮かべガジュマはよしと余計な許容をしつつ、心を切り替え金を払わず済んだ偶然を喜ぶ・・・尚ティアが用意したこの金の出所はヴァンやユリアシティの懐から奪ってきた物である。ペンダントの代金の代わりとして使えるようにとくすねてくる形でだ。これは神託の盾として正式に活動した期間が短いティアからすれば、それ以外に方法はなかったからである。前との相違を作らないようにするため2年前の時、ヴァンをまた刺したが為に。












・・・それから馬車に乗った二人はまた以前のようにタルタロスに追い掛けられる間違ってマルクトに来てしまったことを知り、またエンゲーブで降りてからカイツールを経由してキムラスカに戻ることとなった。
(タルタロスは昔通りのようだな・・・一先ず安心だけど、さて・・・チーグルの森はどうしようかな。ライガの件はアリエッタの事もあるから出来れば穏便に済ませたいけど・・・)
そんな中不機嫌そうにしかめっ面で窓枠に肘をつき外を眺めながらルークはこれからの展望を考える。ライガにアリエッタにチーグルの事をどうにかしなければと思い。
(・・・どうにか俺がイオンから交渉役を奪うべきかな、やっぱ。じゃないとティアは事情を知らないからライガを退治しないとって言い出すだろうし・・・とりあえず俺がなんとかしよう・・・)
しかし出た案は出たとこ勝負という流れに身を任せるだけのものしかない。それもティアがいるからこそ変に動けない為に。故にルークは内心で緊張していた・・・どうにか演じてる自分に沿ってうまくやれるようにしようと強く想う形で。



(もうすぐエンゲーブ・・・大佐にイオン様達と接触して、チーグルの森からミュウを連れてライガを排除しに行く時ね)
対してティアは反対側を見ながらイオン達との再会を嬉しく感じつつも、ナチュラルにライガを排除することに思考を巡らせていた。
(アリエッタには悪いけれど、あそこにずっとライガにいられてもチーグルにエンゲーブの人達は迷惑になるだけ・・・なら説得なんかするより殺した方が早いわ。例えアリエッタに恨まれてもね)
そう考える理由はチーグルにエンゲーブの安全を踏まえての事だが、アリエッタに対しての思いやりはルークと違ってティアには一切なかった。










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