焔の決意と知りし者達

『ルークよ、そなたは底抜けに愚かだ・・・!』
「・・・それはよくわかってるよ、俺も」
・・・人の姿などない、深い森の中。そこに一人、自嘲の笑みを浮かべる腰まで伸びた燃えるような赤毛を持つ青年・・・ルークが立っていた。
自身の頭の中に響くかつての自分を今となっては唯一知る存在のローレライの責めるようでいて自分が辛いと言っているかのような声に、ルークはただ自分も思うと肯定を返す。
『何もあのような形でアッシュ達に道を譲ることなどなかったであろう・・・そなたが嫌われてまででもなどと・・・そしてその結果がどうだ?ヴァンを警戒したこともあり誰にも知らせないままにライマを出たばかりか、最後にそなたを受け入れてくれるやもしれぬアドリビトムにすら顔を出さぬとは・・・!』
「・・・あそこに顔を出したらアンジュに何を言われるかも分からないし、ライマに叩き戻される可能性があったからな・・・顔なんか出せる訳ない・・・出したらまず間違いなくどうにか仲直りしろって言われるだろうしさ・・・」
ただローレライの熱を帯びた声は熱く続きその行動を批難するが、ルークはアドリビトムには行けないと懐かしむようにそっと笑いながら呟く。
『・・・これからどうするというのだ、そなたは?』
「・・・わかんねぇけど、生きてはいたい。意地汚いとか思われてもさ、俺は生きたいんだ。どんなに辛くても・・・だから俺は生きる。これからは自分一人で生きる形でさ・・・」
『・・・覚悟は変わらん、というのか・・・』
それでこれからと聞くローレライへ漠然としていて弱いながらも確かな意志がこもった生きるとの返答を返すルークに、苦々しげな声をローレライは漏らす。
「あぁ・・・アッシュ達やアンジュ達には悪いと思うけどさ。それに今ライマに戻っても、それこそバチカルにいた時のように二度と逃げられないように軟禁されるか・・・都合の悪い事実を隠すために殺されるか、だろうしな」
『!まさかそなた、その事まで織り込んでライマから・・・!』
「あぁ・・・今更戻りたくないって言うか戻れない状況になったしさ、俺はライマには戻らない。もう後はないんだよ、一人で生きていくしか俺には」
『・・・っ!』
・・・ここでルークから爆弾が放り込まれた、もう戻れない確かな理由という爆弾が。
以前のオールドラントでの経験で帰った場合の末路に加えもう退路を絶ったと語るルークに、ローレライは唖然とした。
(ルークは経験もあって現実を知りすぎている、ただ優しいだけが世界ではないことを・・・なのにそのルークの考え方の根本にあるのは、以前と変わらぬままの他者への慈しみ・・・何故だ、何故ルークは考え方を変えなかった・・・今のままであったなら、むしろ心変わりして他者を気にせず生きてくれたなら楽であろうに・・・!)
そしてローレライの心中に訪れるのはルークが変わってほしかったと強く望む気持ちと・・・表現しようもない絶望と、多大な悲しみだった。ルークがルークであるが故に引き起こされ、引き起こしてきた事態に対する事への・・・
(・・・おそらくこのままこの世界で生きたとて、ルークが真に安寧を手に入れることはまず有り得んだろう。オールドラント程分かりやすい二極化ではないこともあり、いつルークを利用せんとする輩が現れるか・・・やむを得ん、もうこれしか・・・!)
『・・・ルークよ、そなたがそこまで言うのならもうライマに戻れなどとは言わん。だが今のままではまともな生活をせなたが送れる保証はない・・・だからこそ言わせてもらう』



『・・・頼む、ルークよ。もう一度、オールドラントに戻ってくれ』










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