再出発の時、一方ならぬ時

・・・そのようにしてルークが部屋で待つ中で時間は進み、ティア達のいる部屋へと場は移る。






「・・・さて、後一時間か二時間もしない内にもう一度呼びに来ると言っていましたから今の内に彼らが持ってきた朝食を食べて準備を済ませましょう。我々と彼らにルーク・・・どのような話になるかは分かりませんが、どうなるにしても今日には地上に戻らねばならないのですからね」
「そうですね・・・アクゼリュスの人々の事にこのダイクロフトの事も含めて、僕達は戦争を止めるために動かないといけないんですから・・・」
「「「「・・・」」」」
その部屋の中で各々が朝食にと持ってこられたプレートを持つ中、ジェイドとイオンの真剣な会話に他の四人は沈黙せざるを得なかった。昨日の内に話し合った中で自分達が早く地上に戻らなければ戦争になりかねない・・・そう言った話になった為に使命感を各々燃やす形で。
(どうなるのかしら・・・預言ではアクゼリュス、いえ鉱山の街と共に聖なる焔の光が消滅すると詠まれていて、それが行われてからじゃなければモース様は動かないはずだからしばらくは大丈夫な筈だけれど・・・)
・・・いや、正確には一人だけ別の事を考えていた。それはティアである。
用意された食事に各々が手を伸ばし出す中でティアは内心考える。すぐには戦争にならないだろうと。そしてそう考える理由はモースの預言通りにしようとする考えを理解しているからなのだが、それだけではない。
(・・・ただ大佐達に私が考えてる事を言わないのは少し申し訳無い気持ちはあるけれど、万が一という事もあるしまだここを出るまで油断してはいけないもの・・・彼らに大佐達への話を聞かれる可能性も全くない訳ではないのだから・・・)
それはまだ確信してはいないからという考えと共に、アドリビトムの面々に対する用心があるからだ。隠しもしないし、油断するつもりもないという用心が・・・これをティアに言えば絶対に否定を返されるだろうが、その考えは冷静に客観的視点を用いた物ではなく極めて私的な物だ。そして私的な物であると気付かぬが故に判断ミスを犯していた・・・ジェイド達にモースが動かない可能性が高いという推測くらいは話しても良かった筈なのに、それすらも言わないという判断ミスを・・・






・・・そして一方、隣にあるアッシュの部屋の中。
「・・・結論は決まりましたか?」
「・・・・・・不本意だが、同行してやるよ・・・どうせあの屑をほっといたってうまくいくなんて思えねぇからな・・・」
すずにユージーンにアスベルという三人と対面しながら話をするアッシュなのだが、すずの問い掛けにあくまで上から視線を崩そうとせずに返すがやはり負けを思い出しながら言っているためか悔しさに滲んでいた。
「それでどうやって同行を言い出すかという流れにするかだが、適当にこちらからきっかけを振るからそれに合わせて言ってくれ。だがここで一つ言っておきたいのだが・・・彼、ルークにはその時には不必要に突っ掛かるようにしないようにしてくれ」
「んだと・・・?」
「落ち着け。そうしてほしい理由とは二人が険悪な空気になることで時間を取ることがないようにと思ってのことだ。皆が集まる場の後にすぐダイクロフトから降りる予定でいるのだが、そこでお前が喧嘩を売って時間を取ってしまえば余計な時間になる。だから極力自分から彼に何か言うような事は避けてくれ」
「・・・フン、俺も余計な時間を食うつもりなんか更々ねぇ。それにあの屑と一々話すような理由もねぇからな・・・そうしてやるよ」
「そうか・・・」
そんな様子にユージーンがルークに突っかからないようにしてほしいと理由もつけて言うと、最初は不機嫌になりかけたがすぐに鼻で笑うような顔で了承を返す。その返事にユージーンだけでなくすずにアスベルの二人もどこか思うように目をつぶった。






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