焔と予想外の想いが絡まる始まり

だが敵や邪魔者相手に対しては情けをかけれず自分の力量を正確に把握してないティアはその事には気付かない。気付くことに思い至れぬまま、まっすぐかつての侵入経路を目指す・・・






(っ・・・この歌声は、ティアが来た・・・!)
・・・そんなティアの一方、ルークは人形相手の稽古の最中に確かに感じていた。ティアの歌声が耳に届いたことを。
(・・・師匠を止めたかったからここに来たんだろうけど・・・なんでこのファブレ邸でやろうと思ったのかな・・・師匠を止めたいのは分かるけど、ここでって意味はあるのか・・・?)
二度目の初めましてが近いその事に、ルークは木刀を振りながらもふと考える。このファブレ邸を選んだ理由を。
(・・・ダアトだと狙いづらかったからか?それに元々ティアは師匠の事は好きだったんだし、考えられるのは師匠を力づくでも止めてそこから自分が納得出来る話をしたかったから・・・だろうな。ダアトだったら神託の盾とかイオン達の目もあるし、下手に大事を起こしたって見られたら最悪神託の盾を辞めかねない事態になりかねないし・・・だからファブレ邸って神託の盾の影響がなくて介入される可能性を減らした場所を選んだんだろうな)
そしてその理由を自分なりに推測するルークだが、そこまで考え表情を一気に歪める。
(・・・近い!)
・・・本当はそこから先の事を考えてもいた。しかしティアの歌声が一気に近付いてきた事に考えを止めさせられた。以前と違い来ると心構えをしていたことや術への抵抗力がついてることもあり、ルークはあえて苦しむフリをし出した。



(ルーク・・・!)
・・・一方屋根の上からルークを目視したティアは歓喜を抑えながら譜歌を歌っていた。今の時点で喜ぶ事は不自然と考えつつ。
(・・・兄さん、貴方の決意が変わらなかったことを私は知っています。そして私達を信じず、欺いてきたことも・・・だから言わせてもらうわ!貴方を止める為に!)
「・・・裏切り者のヴァンデスデルカ!覚悟!」
そしてヴァンを見てティアは宣言して屋根から飛び降りる。今度は止める為に明確に倒すと。









・・・当事者二名の心中はさておき、そこからの流れは以前を彷彿とさせるそのままのやり取りだった。そしてヴァンに襲い掛かるティアを守る動きを取り、ルークがティアと剣と杖を交わした時同じように二人のその身を第七音素が包んだ。
(来たっ・・・!)
(これが始まりよ・・・ルークを本当の意味で取り戻す時間の・・・!)
そして疑似超振動で飛ばされる刹那、二人は同じようで違う始まりを感じ・・・再びファブレ邸から飛ばされた・・・タタル渓谷へと・・・












・・・同時刻、とある所に大勢の人影が集まっていた。その人影達は暗がりに集まっていることがあり、顔をちゃんと確認することは出来ない。
『始まったようですよ、ファブレ邸から第七音素の塊が飛び出ました。話に聞いた疑似超振動が起こったようです』
『じゃあ私達は予定していた通りにするわ』
『やれやれ・・・んじゃ行くか』
『本当にあのお坊っちゃんがそんな殊勝な事を考えるもんかね・・・』
そんな影達は思い思いに言葉を交わし動き始める・・・各々の思惑を秘めながら・・・








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