想いの交錯にぶつけ合う心

「・・・もうめんどくせぇからこのまんま改めて進めてもらうけどよ・・・もう一回言うぞ。俺と一緒に来いよ。俺の事をそんな押し付けるつもりがなかったっつーんならな」
「ぐっ・・・誰が、テメェなんかと・・・っ!」
「もういい加減にしろよ・・・さっきはそう言ったらお前が逃げたって言うだけになったけど、今だとこれも追加されるぞ・・・お前は俺に負けたってこともな」
「っ!?」
そのままテンションを高める事なく話を進めるルークにアッシュはまた反感を浮かべながら拒否を示すが、まさかの言葉が出てきた事に一気に息を呑んだ。ルークに負けたと、今起きた否定のしようのない出来事をナタリアに言われるとのことに・・・そしてその視界の端でジュディス達はそっと納得したように頷いていたが、今言われたことに衝撃を受けているアッシュは気付くことはなかった。
「そうなりゃナタリアがお前に対してどう思うかなんて知らねぇけど、流石に思うだろ・・・なんもかんも俺に押し付けて逃げたんじゃないかってな」
「そうだね・・・特にルークに負けて逃げたってなったらあの殿下の事だから、ショックに思うだろうね。言われたくないことを言われて、それで負けたから尻尾巻いて逃げたってなったらアッシュの事を見損なうんじゃないかい?」
「・・・っ!」
ルークはそんな様子を見てナタリアについての推測を言うとすかさずしいなも予測の声を上げ、アッシュは表情を強張らせた。明らかにナタリアの失望を招くのではないかといった推測に。
「・・・ま、このまんまルークから離れるってんならアッシュが逃げたって言ったって全然構いやしねぇだろうな。負けたって事実もありのままによ」
「そうね・・・その場にいない人の事をどう言うかなんて止めようがないもの。それに歩み寄りを彼が見せていたのに、アッシュがそれを無駄にしたという事実を言わなかったら後で彼がどう言われるか分からないもの」
「っ・・・!」
更にスパーダにジュディスが含み笑いを浮かべながら逃げたら遠慮なくそれらをぶちまけかねない事を口にした事に、アッシュは忌々しげに歯を食い縛った。
「・・・くそがっ!なんなんだテメェらは!この劣化レプリカはともかくとしても、テメェらまで今の事をナタリアに言おうとするってのか!?」
「そりゃ仕方ないって言うか、お前が自分の身から出した錆ってもんだろ。勝手に一人で何にも言いたくねぇって言ってこっちに喧嘩売って、文句のつけようもないくらいにぼろ負けしたんだからな」
「そうだね・・・それで自分の恥を言うなみたいに言われても、僕は筋違いだと思うな・・・ただ、それでも自分に正当性があると思うのなら僕はむしろ彼女にもだけどジェイドさん達に今の事を話した方がいいと思う。自分の受けた仕打ちが間違っていると言うなら彼の方が正しいと確信している僕達だけでなく、今何が起きているか知らないジェイドさん達にも聞く形でね。彼に負けたという事実はさておいても、だ」
「っ・・・!」
そこまで来てとうとうアッシュはジュディス達に対してのルークへの援護とも取れる発言に対し怒りの声を向けるのだが、ユーリからの余裕の見える反論とクレスからの真摯でいて真っ向からの正論に言葉を失った・・・これはクレスから出たルークに負けた事実を差し置いてなどということなどアッシュが見過ごすことが出来ないのが原因だからだ。それを言ってしまえば自身のプライドと共にナタリアに対する面子を一気に傷付けることになると感じてしまった為に。
「(ちょっと予想外だけど、これはこれで話を進めるか・・・俺一人で出来るだけ話をするつもりだったけど、それもほとんど済んじゃったし・・・)・・・あーっ、もうめんどくせぇから今日はここまでにしとくぞ」
「・・・何・・・?」
ルークはその一連の流れを内心意外に思いつつも自身の考えるようにしようと頭をかきながら止めにと言い出すと、アッシュはこちらも意外そうに目を丸くした。どうして止めるのかと。









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