想いの交錯にぶつけ合う心

「多分どう言ったってまともな手段じゃアッシュが俺達と一緒に付いていってくれることなんて無かっただろうからさ・・・あんまり誉められた事じゃないだろうけど、アッシュのプライドを刺激しないと無理だろうって考えたんだ」
「アッシュのプライドって・・・」
「・・・ここから先は実際に見てからにしてくれ。そうじゃないとアッシュにもし気付かれたらまずいことになるかもしれないからな・・・じゃあアッシュを起こすから、ちょっとアニーはどいてくれ」
「起こすなら私がやります。下手をすると起こした瞬間ルークさんに襲い掛かるかもしれませんから」
「あっ・・・分かった、アニー」
ルークはクレスに先はまだ言えないと一応は質問に答える形を取った後にアニーにどくように言うが、自分がやると退かない意志を浮かべながら返された事に少し圧されたように頷き返す。



「・・・ハッ!」
「・・・気付いたか?」
「っ・・・テ、テメェ・・・っ!」
・・・それでアニーの気付けと手当てにより意識を取り戻したアッシュは少し遠くから向けられた演技の仮面を被ったルークの声にパッと立ち上がり、敵意と殺意に満ちた目でルークを見据える。
「・・・この屑がっ!一回勝ったくらいで調子に乗ってんじゃねぇっ!」
「・・・」
‘・・・パシッ’
「なっ!?」
‘ズムッ!’
「ゴハ、ァッ・・・!?」
そのまますぐさま先程の敗北など知らないと言わんばかりにアッシュは勢いよく走ってルークに斬りかかったが、今度はその剣を振る腕を掴み腹に残った手で強烈なボディーブローを放ったルークにより反対に苦悶の表情と声を漏らした。
「ふっ!」
‘バキッ!’
「がはぁっ!・・・・・・くっ・・・!?」
「動くな。じゃねぇと今度はもう気絶程度じゃ済まさねぇぞ」
「っ・・・っ・・・くそがぁぁぁっ!!」
更に前蹴りにより吹っ飛ばされたアッシュは倒れこんだ後に再び立ち上がろうとするが、ルークが距離を詰めて剣を喉元に突き付けて本気で殺すことも辞さないと言わんばかりの声を向けてきた事に少しの間を空け心底から声を上げた・・・もうどうした所で逆転しようもないと、受け入れがたい事実を受け入れなければならないという苦痛を滲ませながら。
「・・・いい加減落ち着け。もうその感じいらねぇんだよ」
「・・・くそっ、この劣化レプリカが!」
「あら?あれだけ見事にやられておいてその言い方はないんじゃないかしら。少なくとも剣の腕に関しては貴方が彼に偉そうに出来ないと思うわ・・・そしてそれを一番感じているのは貴方自身のはずだけれど」
「っ・・・!」
ルークは剣を向けながらも気だるげに話をするがアッシュは全く気にするでもなくそのままの体勢で叫ぶが、ジュディスからの声に返す言葉もなく憎々しげに黙りこんだ・・・いくらルークが嫌いなアッシュとてこの短時間で二度も圧倒的な形で負けた事で勝ち目がないと感じたのだろうが、それこそがルークの狙っていた物である。
「はぁ・・・だりぃ、なんでこんな事になったんだよ・・・つーかお前が余計な事をせずちゃんと返事をしてくれりゃそれでよかったっつーのによ・・・」
「ぐっ・・・テメェが俺を逃げたみたいに言うとか言ったからだろうが!」
「だったらどうやってお前俺に証明しようとしたんだよ、そうじゃないみたいなこと・・・だーくそっ、もうめんどくせぇ・・・」
ルークは先程の緊迫した空気など感じさせないよう剣を引きつつ頭をかいて脱力気味に声を上げると、アッシュは立ち上がりつつまた身を引きながらまた反発の声で勢いよく返す。そんな返しにルークはそれこそ今の自分らしさを盛大に見せ付けるように更に脱力して頭を下げた・・・アッシュが本当の『ルーク』の姿に対して疑問を差し挟むような余地もない演技をしながら。









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