想いの交錯にぶつけ合う心

「あいつはいつも俺に言ってきた・・・記憶は戻りましたかってな・・・正直記憶なんてあるはずもねぇ俺が答えられるはずもなかったし、なんで記憶が戻らねぇんだって思いもした・・・でもお前はそんなナタリアが求めてきた本当の記憶を持った『ルーク』なんだろ?・・・だったらナタリアや父上達の所に戻りたいって思わねぇのかよ!?」
「っ、う、うるせぇ!テメェに何が分かる!」
「分からねぇから聞いてんだろうが!お前が戻らない理由も分かんねぇし、戻りたいのかそうなのかも分からねぇ!だから俺に分からねぇっつってんなら教えろよ!お前からすりゃ俺は屑なんだろうから本物らしく俺にお前の考えてることをよ!」
「っ・・・!」
そのままナタリアの事から一気に戻りたいのかとがなるように言い、どもりながらもなんとか反論にならない言葉を返すアッシュにすかさずルークが顔を近付け本物なら説明をと叫ぶように言ったことにたまらず身を引かせた・・・ここでルークが本物という単語を入れ込んだのはさりげに大きな事だった。アッシュからしてルークに対する絶対的に優位を持つ点は自分がルークの被験者だというプライドがあるからなのだが、それを逆手に取られるような事を言われてしまえばアッシュもいかにルークを毛嫌いしているとは言え一概に無視するのは難しかった。とは言えアッシュがそれで自分の考えを大人しく話すはずもない。
「・・・フン!テメェに何を言ったって分かるわけねぇよ!」
「はぁっ!?」
アッシュはすぐにルークを手で突き放しながら嘲りの言葉を向け、ルークは表情を険しくする。



・・・そう。アッシュはただ言いたくないことは言いたくない、言いたいことは言うだけ言った上で自分が納得するかどうか答えを聞くだけで終わらせる癖が強いのだ。言いたくないことはナタリア相手でも「分かってくれ・・・」とでも言わんばかりに他人には見せない弱々しい声で言う割に、自分が言いたいことにはそれこそ国の上層部にナタリアと言ったメンツを除けば無遠慮にずけずけと物を言いやすい。これはオールドラントにルミナシアと関係無くアッシュに共通しての事だ。

そしてそれはルーク相手になら一層そうなりやすいというのを、ルーク自身よく理解していた。だからこそこうやって煽っているのだ。そういった習性を逆に利用するために。



「だあぁぁぁっくそっ!意味わかんねぇよ!・・・おいお前ら!こいつの言ってることと俺の言ってること、どっちがおかしいんだよ!?」
「そうね・・・答えればそれで話が進むはずなのに、分かるわけないって言う彼の方だと思うわ」
「んだと!?」
「俺も同感だぜ。答えを返せば丸く収まるかどうかは別にしても話は進むってのに、それすらやんねぇんだから悪いのはこのデコッパチの方だろ」
「デ、デコッパチだと・・・!?」
(あ・・・スパーダ、確信犯で言ったな・・・ただありがたいって言えばありがたいな・・・多分スパーダはわざとアッシュを怒らせようとしたのを察してくれたんだよな、これは・・・)
ルークは怒りを浮かべながらクレス達へどっちが悪いと問いを向ければ、ジュディスにスパーダと続けてルークに味方するがデコッパチ呼ばわりにアッシュの沸点が一気に爆発しそうになり・・・そのスパーダからイタズラに成功したと言わんばかりのしたり顔が一瞬向けられた事に、ルークは内心で苦笑いを浮かべた。察してくれたからこその行動に感謝はしても、デコッパチ呼ばわりは流石に予測出来なかった為に。
(ってまずいまずい、矛先がスパーダに向かう前に俺にそれを戻さないと・・・!)
「・・・この「ほら見ろ、俺の方が間違ってなかっただろ!」・・・んだと・・・!?」
しかし剣を今すぐにでも抜かんとして手を動かそうとしてるアッシュにルークは気持ちを切り替え、怒りに割って入るよう得意気に声を上げたことに怒りに殺気が盛大に混じったアッシュの視線はスパーダからルークの方へと向いた。







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