焔と予想外の想いが絡まる始まり

・・・今のルークからして、ガイを改めてガルディオスに戻すのは難しい事と言えた。

前は数多の偶然が重なった上でガルディオスの遺児という事実をガイが明かすに至ったが、その道筋をそっくりそのままトレースするつもりはない。そうしたなら自分を始めとした命を失わせることになる上、自身もだがローレライも望む変化を起こしにくいが故に。

だからこそ別の道筋を行くつもりのルークだが、それが今回のガイをガルディオスに戻すためのきっかけが無くなると考えていた。



「・・・あー、ここで考えても仕方ないな。これについては旅が始まってから考えるか・・・」
・・・故にルークは悩んでいた、ガイをどうすればいいのかを。しかしいい案を考えられずルークは微妙に表情を歪めながら部屋を出た・・・後に考えるしかないと思い・・・















・・・数十分後、前のようにヴァンからしばらくバチカルに来れないから稽古に付き合ってやると言われてルークは剣術の稽古に勤しんでいた。

そんな中、きっかけを告げるもうひとつの存在がファブレの屋敷へと近付いていた。



(・・・もう少しね)
・・・その存在はティアだが、譜歌を歌いながら屋敷の中を進むその瞳には先しか浮かんでいない。足元で倒れる兵士など眼中になく、ルークしか・・・



・・・ティアは一日千秋の想いでこの日を待ちわびていた。ルークと初めてあったこの日を。下手な差があってはいけないと時期を前倒しにして突撃したくなる気持ちを抑えていたが、それも我慢しきった。それが故に逸る気持ちを抑えつつティアは慎重に譜歌を歌いながら、屋敷へと侵入した。

ただここでティアは知るよしもなかったが、ある意味幸運と言える事が起こった。それは譜歌の威力が前と大差がなかったため、屋敷の人間が然程肉体的な被害を受けなかったことだ。

元々ユリアの譜歌は普通の譜歌と違い、攻撃としても使える譜歌である。そして譜歌に限らず譜術において重要なのは、鍛え上げた精神力だ。そしてティアの中で相手を眠らせる譜歌とは魔物相手にもダメージを与えれる、ナイトメアである。そんなナイトメアの威力はエルドラントの時のティアであれば単純な見立てをしても、当時ルーク達が会った頃のライガクイーンを一撃で瀕死に追い込むくらいは可能と言えた(尚これは余談だが個体差もあって強さに差があるライガだが、そんなライガ達を産んだクイーンは体格などから見ても子供達に著しく劣ることはない。あくまでルーク達が会った時のクイーンは子供を産み、著しく体力を落とした一種の手負いの獣の状態だった。故にクイーンも警戒をして気を張っていたのだが、おそらく万全の状態だったらジェイドが来る前に一撃で勝負が終わっていても不思議ではなかっただろう)。

もしナイトメアから物理的なダメージを無くしたとてそんな威力の物を放っていたらおそらく屋敷の人間は譜歌に抵抗する気力も成す術もなく、倒れ込む姿勢を選べず地面に崩れ落ちただろう・・・そうなれば怪我や致命傷を負っていただろう者がいても体勢次第ではおかしくなかった。それほどに精神力と言うのは必要な素養なのである。譜術を扱う方にも、それを受ける方の防御力の為にも。

・・・それでこれがまとめとして一番重要な事だが、ティアは眠らせる以外に何も他者に害を与えてないと信じて疑わないからこそ譜歌の威力が然程変わらないことが功を奏していた。おそらくティアは眠るだけなら何の害にもならないと自分やガイ達が譜歌にかかったことがない事を考えない上、本来の使用目的は援護の為の物と思っているから安全とタカを括っているのだろうが、そうそう甘い話ではない。もし前に譜歌のせいで人が頭を打ち死んだと言われたならティアはどのように詫びるつもりだったのか?そしてどう処分が下っていたのか?・・・そう考えればティアの実力が前と純粋な身体能力的な意味で大きな違いがないのは幸いと言えた。










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