想いの交錯にぶつけ合う心

「・・・分かった。アッシュについてはそうするようにするけど、今から呼んできた方がいいかな?」
「あ、いや・・・話に出てなかったけど、多分アッシュはティア達と同じか近くの部屋にいるようにしたんだろ?だったらナタリアがアッシュと話をしたいって離れないだろうから変にナタリアに何か言われても困るし、しばらくしてからにしてほしいんだけど・・・」
「・・・まぁあの二人なら長い間会ってないとなればそうなるだろうな。いいだろう。すずに頼んで一人になったのを見計らって夜にでも会えるように機会を設けてやる」
「助かる」
クレスがその真剣さに頷いた上で今から呼ぶか聞いたがルークは首を横に振りながらそうしないようにしてほしいと訳つきで頼み、リオンが納得した上で対処はすると了解を返す。
「よっしゃ、んじゃもう何もないよな?だったら今度は俺と手合わせ頼むぜ。もう時間も十分過ぎたことだしな」
「じゃあクレスの次は俺がやらせてもらうぜ?」
「ちょっ!?なんでスパーダまでやんだよ!」
「フフ、諦めなさいルーク」
そこにユーリが待ってましたと言わんばかりの笑みで手合わせと切り出し、ノリノリの笑みでスパーダまで便乗してきたことにルークは驚きを浮かべる。だがジュディスの笑み付きの言葉に従うかのよう周りも止めることはせず、その光景を暖かい笑顔で見守っていた。












・・・そんな風にかつてのようでいて前とは違う時間を過ごすルークから場面は変わり、ティア達にあてがわれた部屋へと移る。



「・・・随分と話し込んでますね、ナタリアとアッシュ・・・」
「・・・ナタリアからすれば長年待ち望んできた約束を持つ『ルーク』との再会ですから、話し込むのでしょう」
「・・・あいつが、本物のルーク・・・」
「・・・今ルークは何をしているんでしょうか・・・」
・・・六人が休むには十分なスペースとベッドがある部屋の中はルークがいる場とは雲泥の差があると言えるほどに場の空気は重く沈んだ物となっていた。ベッドを椅子がわりにして向かい合うように顔を合わせている一同の中に明るい顔をしている者は一人もいない。
(アニスはなんとか話を繋げて場の空気を良くしようとしているけれど、大佐はレプリカの事実を知ったからかあまり歯切れがよくない・・・ガイはアッシュの事を知ってルークとのことと葛藤していて、イオン様は事情を受け止めきれていない・・・流石にこんな空気の中にずっといるのは辛いわね・・・ただ私達と一緒の部屋は嫌だとアッシュが言って別の部屋にアッシュが行ったからこんな状況になったけど、アッシュが一緒にいたらそれはそれで気まずかったでしょうね・・・はぁ・・・)
一人沈黙を守るティアは考え事にふける中で各人の状況もだが、もしアッシュが一緒にいてもろくなことはないだろうと内心でタメ息を吐く。
(・・・いけないわ、こんなことを考えるよりまずは彼らの方をどうにかしないと・・・このままの流れだとあの人達が同行する事になるかもしれないし、空気を変えるためにもそうなったら反対するように皆に話をしておいた方がいいわ・・・)
それで場と自分の考えを変えようと考えるのだが、そこにあるのは尚もアドリビトムに対する拒否を示す物である。だがティアは全くそんなことを考えもせずに口を開く。
「・・・あの、大佐」
「・・・なんですか、ティア?」
「少し考えたんですがこれから先、彼らが私達に付いてくる事も考えられます。その時「彼らの同行は私としては望むところです」っ、何故ですか・・・?」
「簡単に理由を上げると断った時のデメリットが大きいからです。特にアクゼリュスの住民はこちらで保護されてこそいますが、それを知っているのは今このダイクロフトにいる私達だけです。そこでお聞きしますが、彼らと別れた所でどうやって我々はアクゼリュスの住民がこのダイクロフトにいると証明するのですか?彼らを頼る以外にここに来る手段はありませんし、第一ダイクロフトに住民も自分達も行ったなどと言葉だけで言った所で誰も信用してくれずに笑われるのがオチですよ。証拠が無ければ誰も信じてはくれません」
「!!」
・・・だがその浅はかな考えはすぐに叩きのめされた。他ならぬ仲間だと思っていたジェイドに。
意を決して発言しようとして遮られた時には苛立ちを押さえた目を向けたが、理路整然とアドリビトムの面々が必要な理由を語られ大きく目を見開いた・・・その事を考えてもいなかったと、そう自らで示すように。







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