焔と予想外の想いが絡まる始まり

‘コンコン’
「ルーク様、よろしいですか?」
「ガイ?なんだ、入れよ」
・・・そんな風に考えていた時に扉のノックの音の後のガイのどこか急いだ声が聞こえてきた事に、ルークは意識を戻して扉に向いて入室しろと声をかける。
「・・・なぁ、やっぱり窓の方から入らせてくれよ。使用人の俺がここに入ってるのを知られたらまずいんだけど・・・」
「何いきなり言ってんだよ、ガイ。つーか前も言っただろ、窓から来んなって。それで俺驚いて頭ぶつけてんだ。父上に言われなかっただけでもありがたく思えよ」
「うっ・・・そ、そうだったな・・・」
それでサッと入室して口にしたのは窓から入りたいとの切実な声だが、ルークが呆れたように却下を告げた事にガイは反論出来ず口ごもる。



・・・今回内密に色々やっていたルークは必然的に自分の努力を見られるような事を避けようと動いていた。だからこそ起きたことなのだが、ある時ルークが部屋で今のルークには難しいとされる本を見ているとガイが前のように窓からいきなりやってきた。ルークはそのいきなりのことで驚きのあまり転んで頭を打ったのだが、その時にこう思った。『こんなことが何度も続くのは色々キツいから、窓から入るのは禁止させよう』と。

それで心配して近付いてきたガイに対し「もう二度と窓から来んな。じゃねーと父上に言うぞ」と機嫌が悪いといった態度全開で告げた。ガイも流石に悪いと思ってそれで自嘲する・・・かに思われたが、しばらくしてからまた窓から部屋に入ってきた。これにはルークは更に激昂した様子で次にやったら今度こそ父上に言うと告げ、ガイを撃退するに至った。今となってはガイは部屋に入る際は人目を盗んで扉を素早くノックして声をかけ、ルークの許可があって入れるようになった。

この事に関しては言ってよかったとルークは感じていた。向こうからの干渉をいきなり受けなくなったことや、今の自分はガイのサポートはそこまで必要じゃないと思っていた為に。



「それよっか何の用だよガイ」
「あー、いや今日は剣術の稽古をしないかって誘いにな」
「あ、ちょっと黙ってろ・・・そろそろメイドが来る時間だ」
「えっ?」
そんな姿に悪いと思ったことはさておきと来訪の訳を問うと、以前のように剣術をと誘うがルークはそこで思い出したようメイドの来訪があると言う。以前の記憶が正しければこの時間だと、以前より人に見られんとする為に早い時間で来訪したガイの呆けた顔を尻目に。
‘コンコン’
「・・・ルーク様、起きていらっしゃいますか?」
「あぁ、起きてるから入んなよ」
すると本当にピッタリノックにメイドの声が聞こえてきた事にガイが声を出さず驚き、ルークは全く気にした様子も見せず答える。
「今日はヴァン謡将がお越しになられています。起きられたらすぐに来るようにとの公爵様からのお言葉です」
「師匠が?・・・わかった、下がれ」
「はい、失礼します」
メイドはすぐに来訪の訳をドア越しに伝え、ルークの喜色を滲ませつつそれを押さえ込む言葉にドア越しで退出を告げる声が響いた。
「・・・謡将が来たのか?今日は来訪の予定はないって聞いたけど・・・」
「さぁ、俺も訳は知らねーけど師匠が来たんなら今日は剣術の稽古に付き合ってもらうぜ!・・・んじゃガイ、俺は行くからお前もさっさと仕事に戻れよ」
「あぁ、じゃあな」
メイドの気配が無くなりガイが何をと呟くが理由を知ってはいても答えるつもりのないルークは適当に場を終わらせようとし、ガイは先に部屋から出ていく。今度こそ窓から出る形で。
「・・・今回どうなるのかな、ガイ・・・アクゼリュスをむざむざ落とすつもりもないし、復讐をさせるつもりはないけど・・・だからって意識的にガルディオスに戻すにしても、ガイから事実を引き出さなきゃならないんだよな・・・そうするには前のようにカースロットにかかってもらわないといけないんだけど、前の流れを完璧に組むつもりはないからうまくいくとは限らないし・・・」
一人残ったルークはガイの消えた窓の方を見ながら複雑そうな顔を浮かべる。どうしたものかと・・・









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