焔も想像しなかった行動達

「ティア、それにアッシュも落ち着いてください・・・ここでこんなにいがみ合ってどうするんですか・・・?」
「っ、イオン様・・・」
そんな場に口を出してきたのはイオンで力ないながらも声を上げる姿に、ティアは驚きながらその姿を見る。
「僕としては皆さんを敵だと思いたくありません・・・ヴァンから僕達の事を皆さんは守ってくれましたし・・・それに味方か敵かを疑う前にここから出るのは必要な事の筈ですが違いますか、アッシュ?それに住民の皆さんも放っておけませんし・・・」
「・・・チッ、まぁいい。こいつらが何かしてくるなら後で叩き潰せばいいことだ。それにこんなところでこの屑と顔を合わせてるのも気分が悪いからな・・・俺は外に出る、テメェらもさっさと来やがれ。そこで話をしてやる」
そのままイオンが外に出てからにしようと訴えるように言うと、アッシュは仕方なさそうに妥協した上で乱暴に言葉を残して場を後にしていく。
「・・・イオン様、何故・・・」
「ティア、ここで僕達が対立して何になると言うんですか・・・それに貴女の言い方は皆さんを最初から敵として疑っているようにしか聞こえませんでしたし、皆さんの気遣いを無視しているようにも思えました・・・貴女は皆さんの事をどう思ってそう言ったのですか?」
「そ、それは・・・」
アッシュの姿が見えなくなった事でティアが信じられないように何故と言うのだが、逆にイオンから返答をもらった上で何故と悲しそうに返されたことに言葉に詰まる。
「・・・話はそこまでにして外に出ましょう。確かに色々と不明な点はありますがここにいるだけでは事態は解決しませんし、時間をかければアッシュの性格を考えると痺れを切らして何処かに行きかねませんからね・・・ティア。彼らを貴女が信じられないにしても、ここはもうこれ以上何も言わず外に出ますよ」
「っ・・・はい、分かりました・・・」
更にジェイドもこれ以上は場が停滞するだけと主にティアに対して告げたことに、当人はアドリビトムの面々とジェイドの顔を交互に見た後にかなり不本意そうに頷いた。
(よかった・・・とりあえず戦いが始まるとかって事態にはならずにすんだな・・・でもイオンだけならともかく、ジェイドまでここで制止をかけたってのは正直意外だったな・・・まぁありがたくはあったけどな。俺の言葉だったらティアが聞くか分かんなかったし、今の俺は表向きはそんな仲直りしろだとか言えるような状態でもないし)
それで渋々元々来た道にティアが戻っていき一同もその後に付いていく中、ルークは動揺に震える演技の中で助かったと内心感じていた。意外な所からの援護のありがたさも感じつつ。
「・・・ルーク、大丈夫か?一体何が起きたのか、まだ俺もよく分からないからお前の口から聞きたいんだが・・・」
「っ、お、俺にもよくわかんねぇんだよ・・・師匠がいきなり訳のわかんねぇ事を言い出して、それで急に怖い顔になったと思ったらあいつらが来て・・・」
「・・・そうか・・・」
そんな中でガイがルークに近付き声をかけてきた事に動揺覚めやらぬといったように返すと、何とも言い難い様子で声を上げる。
「・・・とりあえず無理をせずゆっくりと僕達の後に付いてきてください。気持ちを落ち着かせるにしても時間は必要でしょうからね」
「・・・あぁ・・・ガイ、先に行け・・・俺も後で行くから・・・」
「あ、あぁ・・・」
ヒューバートがその様子に後で来るように勧め、ルークが力なく頷いた後に先に行くよう言えばガイはまた何とも言い様のない様子で先へと歩き出す。
(とりあえずアッシュから真実を知らされてしばらくするまでは皆に流れを任せるか・・・俺から何か言い出せるような空気じゃないし、ジョニーさんとかの言葉が正しいなら皆が対策を取ってるから大丈夫なはずだし・・・)
そしてルークは最後尾を歩き出すのだがその表情の暗さとは裏腹にしばらくは傍観だと冷静に考えていた。自分の番はまだ後になるのだからと。










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