焔も想像しなかった行動達

「どうしたんですか、師匠?街の中を探してもいなかったから探したんですよ?」
「あぁ、済まなかったなルーク・・・導師も一緒ですか。導師、こちらの扉を開けていただいてよろしいですか?」
「えっ・・・どうしてですか?」
「この街に広がる障気を消すためにこの先に行く必要があるのですよ。そしてルーク、私がここに来ていたのはそうするためでありそれを出来るのがお前だけだからだ」
「えっ・・・俺だけ・・・?」
そのままに師を慕う顔で話し掛けるルークにヴァンは真剣な面持ちで話をしていき、その障気に対する切り出し方にルークは戸惑いを見せる。
「・・・導師、この扉を開けていただけますか?」
「・・・わかりました、そういう事なら」
ヴァンは視線を向けイオンに扉を開けるように頼むと、イオンは少し考えた後に頷いてダアト式封呪の扉に向かい手をかざす。
‘・・・パキィィィン’
「・・・うっ・・・!」
「っ、おい大丈夫か・・・!?」
それでイオンの周りに譜陣が浮かんだ後に目の前のダアト式封呪の扉が音を立てて消え去ったのだが、すぐに体調を崩し膝をつく姿にルークは心配そうに声を上げ近付く。
「無理をさせ過ぎたましたか・・・ルーク、お前は導師に付いてゆっくりと歩いてきなさい。私は先に行っておく」
「・・・はい・・・」
ヴァンもその様子にそっと心配するように声をかけてから先へと行き、ルークは複雑そうに頷く。
「すみません、ルーク・・・僕のために・・・」
「いや、気にすんな・・・それよっかゆっくり行くぞ。お前辛いんだろ」
「あ・・・はい・・・では行きましょう・・・」
イオンは申し訳なさげに青い顔色ながら謝ってくるが、ルークが気にしないように言うと少し意外そうにしながらも頷いてから歩き出す。
(・・・気配に姿はないけど、多分皆は俺達の後に付いてくるんだよな・・・後はなるようになれ、だ・・・!)
そんな気持ちを受けてはいるがルークはアドリビトムの面々の行動の方に考えを向けながら意志を固める。ヴァンと対峙するその時の為に。









・・・それでルークはイオンと共にゆっくりとセフィロトの中を進んでいき、パッセージリングの操作板の前にいたヴァンの元に辿り着いた。
「師匠・・・ここって・・・」
「こちらに来なさい、ルーク」
「はい・・・(来た・・・っ)」
ルークは何も知らないフリをしながらヴァンに近付き、そのヴァンは優しげな笑みを浮かべ手招く。ルークは表向きは従順に従いながらも、時が来たことを確信する。
「・・・なんなんですか、師匠ここ・・・?」
「・・・私の言う事に耳を傾けるのだルーク。そうすればこの街に広がる障気を消すことが出来る」
「え・・・な、何を・・・(師匠、単刀直入過ぎないか?前はこんな直接何か言ってこなかったと思うけど・・・多分バチカルで俺に自由になれることとか超振動の事を言ってなかったから、俺の説得に時間を取る気がないんだ・・・素直に言うことを聞かせるための時間を・・・)」
尚も何が起こるか知らないフリを続けるルークだが言葉の端に急いでいるような響きを感じ、不安な気持ちを見せる傍らでヴァンの行動を前と違う変化だと考えた。
(そして俺の予想が正しいなら多分、師匠が次に言う言葉は・・・)
「・・・さぁ、力を解放するのだ!愚かなレプリカルークよ!」
「(っ・・・やっぱり・・・そしてローレライ・・・ありがとう・・・!)・・・え?・・・愚かなレプリカ、ルーク・・・?師匠、何を言ってるんですか・・・?」
「・・・どういう事だ、何故何も起こらん・・・!?」
・・・だからこそ予想が出来た前より早い師の断絶の言葉の予想に、いざとなれば精神に肉体が壊れても我慢しようと思っていた暗示を解除してくれたローレライへの感謝が出てきた。
嬉々として、それでいて憎々しさを浮かべる暗示を発動させる言葉を紡いだヴァンだがルークには暗示は効かない。しかしルークは尚も何も知らないといった様子で、それでいて混乱と不安に満ちた様子で何なのかと問うのだがヴァンはここで初めて動揺を浮かべ言葉を荒げた。全く超振動を使う様子を見せないルークを信じられない物を見るように見ながら。








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