焔と予想外の想いが絡まる始まり

・・・そんな風にローレライから思われているティア。そんなティアは前のようにユリアシティにいた。



「・・・一体どう言うことなの、ローレライ・・・この世界は本当に私や大佐達、それにルークのいた過去なの・・・?」
・・・素材がよくフリルのついた寝間着に身を包む九歳程度の姿形をしたティアは一般的に見れば美少女と言えようが、今の表情は子供らしさとかけ離れた厳めしい物となっていた。
現にベッドに腰をかけて本と向き合うティアの独り言もローレライに向けての批難が多大に含まれていた。本来なら世話になったことを感謝せねばならないというのに。
「ダイクロフトなんて訳の分からないものに異なる種族・・・前はこんな違いなかったじゃない!・・・いくら力を使って過去に戻ったからってこんな変な違いが出るなんて聞いてないわ・・・それでもう改めて同じところに戻すことも出来ないなんて・・・」
そこまでティアが愚痴る訳とは、ルーク同様以前との違いを知ったからだ。しかしルークと違いティアはこの環境を苛立たしく思っているのだ、以前と違う・・・と言うことを。



・・・ティアがこの以前と違う過去に戻ってきたのはつい先日の、ルークが産まれた日の事である。その時は歓喜を覚えたが未来のローレライからかつての過去とは違うことを告げられ驚くと共に、抗議をした。こんな場所に戻したことを。

しかしローレライからの返答は無理に過去に戻したからズレが出るのは仕方のないことであり、最早この過去では自分が更に介入することは出来ないというものだった。今の時間帯の我は地核にいることや過去に戻したからエネルギーがもう足りないということで。

そんな返答をもらったもののティアはまだ納得が出来なかったが、ローレライが元の時間軸に帰らなければ不都合が生じるということで話を打ち切られる形でこの過去に留まることになった。この世界にはルークがいるのは間違いないことだからと残された上で。



「・・・もういいわ。一々考えてもどうしようもないことのようだし・・・それにルークがいるのは間違いないと言っていたから、今度は絶対にルークと生きて見せるわ・・・私は・・・!」
延々続くと思われていた愚痴を気を取り直すことで切り上げたティアは決意を新たにする。ルークと生きると・・・



・・・だがティアは気付かない、いや考えようともしない。自分の行動がいかに他者に迷惑をかけたか、ルークの為と言いつつそれがルークの気持ちを本当に汲み取った物ではない行動だということを・・・そしてそんなティアの事を警戒した上でローレライはルークの事、そしてダイクロフトやダイクロフトにまつわる者達の事を教えなかったと言うことを・・・















・・・そんな互いが互い、過去に戻ってきたことを知らぬルークとティア。そんな二人は出来る限り前に合わせようと、表向きは前のように振る舞っていた。その訳としてはこの時点から行動をして後で妙な状況になるのを避けたかったが為だ。ルークはガイやヴァンが前と違うことで変な行動に考えをされたらまずいと考え、ティアは出来る限り前をなぞらねばルークに会えなくなる可能性が高いと考えたからだ。

図らずも両者の考えが一致した・・・と思いきや、この両者の間で違う点がある。それは誰にも見られんとする中での影の努力をルークは怠らず、ティアは大して何もしなかったことだ。

これはルークは自分の体を出来る限りに強化して前以上にしようと人に見られない間に動き、ティアは自分は前より強いから大丈夫とタカをくくっているからだ・・・尚言っておくが、一応ティアの思うよう昔の時のティアに比べれば確かに今のティアは強いことは強いのだ。前の経験に今の時点で失われたと思われた譜歌を使えることで。しかしそれはあくまで強い譜歌という大砲があるという意味でであり、あくまで純粋な身体能力という意味ではまだ子供のままに過ぎないのだ。だがそれをティアは理解していない・・・自分は経験があるという自負に加え、後方支援が役目と思い他の事を考えもしようとしないが故に。

・・・いかに強い大砲があろうが土台が貧弱では一発一発を打つ度に大がかりな調整がいるということを思い付かないが故に、ティアはただ単に前をなぞってある程度程の鍛練しかしていなかった。ただひたすらに自分の想う理想に向かい自身を影で磨くルークと違い、未来を知ることによる怠惰で盲目な自負に溺れる形で・・・





















・・・そのように互いの事など知ることもなく、七年という月日は長くも早く過ぎていった・・・片方は生きて理想を掴む為以前よりたくましくなったことを自覚し、片方は自分は以前より強いと自覚してはいるがその実ただ自己評価が本当の実力より高いと知らぬまま・・・









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