終わりの始まりは変革に染まる始まり

・・・それでルーク達はその兵士の案内の元、代表者の元へと来た。



「・・・おぉ、貴殿方がキムラスカの代表の方ですか」
「・・・そうだけど、あんたがアクゼリュスの代表なのか?」
「はい、パイロープと言います」
(・・・パイロープさん・・・こんな形で会うなんて思わなかったけど、今度は貴方達を・・・死なせてしまうような事は、しないから・・・)
少し進んで周りを岩壁に囲まれた道の一角、そこにいたパイロープがルークの姿を見て挨拶を交わす。その笑顔に演技で接するものの、内心では泣きそうな気持ちを必死にこらえていた。過去にアクゼリュスを消滅させた負い目は今も尚、ルークの心に強く残っている為に。
「失礼・・・今のアクゼリュスの状況はどうなんですか?」
「はい、今の状況は住民の救助もこの通り進んでいますが・・・そちらの方は大丈夫ですか?見た所具合が悪いように見えますが・・・」
「・・・っ、大丈夫ですかイオン様?」
「・・・少しキツい、ですね・・・」
ジェイドがそこに横入りするよう会話に加わりパイロープも答えるが、イオンを見て心配そうに声を向けた事にジェイドは振り返り大丈夫かを問う。ティア達も心配そうに視線を向ける中、イオンは青白い顔で首を横に力なく振る。
「おいおい一体どうしたんだよ、いきなり?」
「・・・時間があったので大丈夫かと思ったのですが、やはりダアト式譜術を使った後はちゃんと休憩しなければいけませんでしたね・・・」
「ダアト式譜術?なんだってんだよ、それは?(やっぱザオ遺跡でダアト式譜術を使っちまったか・・・セフィロトへの扉を開けるために・・・)」
「あの・・・少しよろしいですか?」
「ん?なんだよ?」
ルークはいきなりの事に訳が分からないと声をかけつつイオンの苦し気な返答にダアト式譜術について初めて今回聞いて眉を寄せるが、内心では苦い気持ちを抱く。そんな中でパイロープが恐る恐ると入ってきた事に何かと問う。
「よろしければ少しこちらで休憩していかれてはどうでしょうか?そちらの方の体調はあまり良くないようですし、まだ峠は先が険しいですから体調が整うのをお待ちした方がいいと思います」
「は?いいのかよ、俺らがアクゼリュスに行くのが遅れて?」
「そちらについては少しの時間ならば問題ありません。先遣隊がこのように皆様を救助していますので、余程の急を擁する事態でなければ休憩するくらいは許容範囲です。それにこのまま峠を越えようとしてもパイロープ氏の言われるよう、先の道は険しいですので導師の体力が持つかどうか・・・」
「・・・ちっ、しゃあねぇな。んじゃしばらく休憩にすんぞ」
「そうですね、この状況ではその方がいいでしょうから」
「すみません、皆さん・・・」
それでパイロープが休憩を勧めてきたのでルークはいいのかと返すが、自分達を連れてきた兵士がその勧めを後押しするようにそうするべきと言ってきたことに頭をかきながら了承し、ジェイドも頷いた事にイオンは済まなそうに頭を下げる。
(・・・まぁとりあえずこれでいいか。イオンが体調崩してるんなら休憩の流れになるのは目に見えてるし、何より師匠とロクに話してないってのもあっからあんな風な事を言うのは避けたいしな・・・いくらなんでもあの空気が一気に悪くなる感じをもう一回味わいたくないし・・・)
その中でルークはホッとしていた。前のようにトレースするつもりはないとは言えあの発言をする必要がない状況が出来たことに。



(ちょっとどういうことなの、これは・・・!?前だったらルークのイオン様に対しての有り得ない言葉で空気が凍った筈なのに、どうして・・・!?)
・・・対してティアは一人この流れに混乱の極みに至っていた。自分の予想していた流れが来ないという自らにとって有り得ない状況を前に。






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