終わりの始まりは変革に染まる始まり

「二人の意志はとても固いのは容易に分かることよ。ルーク、貴方も今彼女の説得に失敗したでしょう?・・・今の私達はアクゼリュスに急ぐべきだけれど、二人を説得するためにそんなに時間は割くことは出来ないわ」
「・・・だから連れてけってのかよ・・・?」
「今の状況での最善を提案しているの、私は」
「そうです!彼女の言う通りですわ!私は何を言われても引きませんわよルーク!」
「・・・すみません、ルーク・・・」
「っ・・・っ!」
そんなティアが表情を変えず連れていくことを勧めるとナタリアは息巻いて、イオンは申し訳無さそうにしながらも引かないと意志を示してきた事にルークはわなわな震えた後にガイ達にパッと視線を向ける。
「お前らはどうしたいんだよ!こいつらをアクゼリュスまで連れていきてーのか、あぁ!?」
「・・・個人的な所で言えばあまり賛成は出来ませんが、私はマルクトの軍人ですから二人をお止めする権限はないんですよ」
「すまんルーク、俺じゃナタリア様を止めることは出来ない・・・」
「私もイオン様がアクゼリュスに行くことは反対なんですけど、イオン様が行くって譲らないんで私にもどうにも出来ないんですぅ~・・・」
「・・・っ!」
勢いそのままにガイ達に反対しろと言わんばかりに声を向けるが、揃って止められないと返したことにカッと目を見開き・・・
「だーっ、くそっ!付いてきたいんなら勝手にしやがれ!どうなったって俺は知らねぇからな!」
付いていくという二人に向かって半ば投げやりに叫んだ。もうどうにでもしろと。
(よし、これで二人も一緒に付いていく事になった・・・後は船に乗るだけね・・・)
最後に残ったルークの仕方なしの許可にティアは薄く微笑む。自分が今の状況を作ったことなど忘却の彼方に置いて。



(・・・ま、こうなるのは目に見えてたから仕方ないけど・・・やっぱりティアのこの変化はあんまりいい変化とは言えないよな・・・これからの旅じゃティアを頼るのは極力やめよう。タタル渓谷の頃からそうで何か妙な感じはしてたけど、このどこか無謀な感じに背中を任せる気にはとてもなれないし・・・)
一方ルークは苛立ちを浮かべるその表情とは全く逆に、ティアに信頼を向けれないと失望に近い感情を浮かべていた。積もり積もった物はかつてのティアより頼りないと断じる材料となる形で。
(まぁとりあえずまずは・・・)
「もう俺は船の方に行く!遅れんなよお前ら!」
そこでルークは気持ちを切り替えつつ怒り心頭といった様子でズカズカと部屋を退出していく。






・・・そして一人先に船に乗ったルークの元にティア達も集まり、船はカイツールの軍港へと出航した。






「大丈夫ですの、ご主人様?」
「・・・大丈夫な訳あるかっつーの・・・おら、ちょっと外に行ってろ。しばらく一人で考え事してぇからガイの所にでも行っとけ」
「はいですの」
それで船室の中の一室で机に肘をついて不機嫌そうに頬杖をつく姿にミュウが心配の声を上げるが、ルークはむんずと足元のミュウの頭を掴んで入口に向かっていきドアを開き足元にその体を置いて一人にしろと言う。ミュウは素直に頷き場を後にしていき、ルークはそれを見届けドアを閉める。
「・・・さてと、アクゼリュスじゃどうすっかな・・・ある程度まで何も知らないフリをしないと多分師匠も尻尾を掴ませてくれないだろうけど、完全に尻尾を出す時ってなると俺の暗示を発動させる時だろうし・・・」
一人になった場で机に戻ったルークは独り言を呟きながら、頭を抱え表情を難しそうに歪ませる・・・暗示でパッセージリングをまた壊すような事態はルークも避けたいと思っているが、そこまでしなければヴァンの仮面も剥がせないと思っている為に。
『・・・ルーク、聞こえるか?』
「え?この声って・・・ローレライ?」
と、そんな時にルークの頭の中にローレライの聞き覚えのある声が届いて驚き混じりに眉を寄せた。いきなりのローレライからの通信もだが、チャネリングの際の頭痛がなかったことに。










15/22ページ
スキ