終わりの始まりは変革に染まる始まり

「・・・十中八九、イオン様をさらったのは神託の盾でしょう。おそらく神託の盾はもしバチカルからイオン様が脱出したもしもの場合に備えて、オアシスに手勢を潜ませていたのだと思われます」
「では大佐、すぐに彼らを追いましょう」
「そうしたいのは山々ですが・・・彼らがどこに行くのか目的地の検討がつかないことが悩みの種です」
「えっ・・・!?」
ジェイドはその中で冷静に推測を述べティアはこれ幸いと追うことを提案する。しかし表情を微妙に歪ませたジェイドの発言に驚きを浮かべた。
「ここで神託の盾のいる場所か、もしくは目指す場所が分かるというなら追いかけようもありますがあいにく手掛かりはありません。それにここは砂漠です。無闇にタルタロスを探し回るのは無謀以外の何物でもありません・・・せめて神託の盾がどこに行くのか、それが分からないことには私はイオン様の捜索には賛成出来ません」
「「・・・っ!」」
そうジェイドが思う理由はイオンの行方のわからなさにあると言いつつ捜索に難色を示す姿に、ティアはハッと息を呑みルークもそっと息を呑む。



(そうだったわ・・・あの時は確かアッシュがルークに同調フォンスロットを開いてこっちにザオ遺跡へ来いと言ったから行ったんだったわ・・・)
ティアはその中で不覚だと感じつつ思い出す、前にザオ遺跡に行った訳に関して。
(どうしよう・・・イオンの行方は多分ザオ遺跡だとは思うけど、流石にそこに行ったなんて言ったって信じてもらえるなんて思えないんだよな・・・今は証拠もなんもないし、それに俺がイオンを積極的に助けに行くってのも違う気がするし・・・)
それでルークもその事に考えが至るのだが、自分から言えることではないと頭を悩ませる。



「あの・・・さっきの変な二人組についてだったら、もしかすると行き先が分かるかもしれません・・・」
「「「「えっ・・・?」」」」
・・・言いたいけど言えない、そんなジレンマに苦しむ二人とガイ達の耳に声が届いた。希望とも取れるような声が。
一斉に一同が振り向くとそこにいたのは目元まで深くフードを被った色白の少年らしき人物なのだが、そこで一人ルークは誰より驚き目を見開いていた。
「・・・すみませんが、どこに行くとか言っていたのですか?」
「何か導師が来たらお前は師団長に連絡を取れだとか、先に俺はザオ遺跡の方に向かうとか言っていたのですが・・・」
「ザオ遺跡、ですか・・・すみません、貴重な話をありがとうございます」
「ということはそこに行けばイオン様はいるんですね、大佐ぁ!」
「えぇ、そうなります」
ジェイドが慎重に内容を問いかけるとその人物は思い出すように声を上げていき、ザオ遺跡と出たことにアニスはジェイドと顔を向け笑顔になる・・・一方その端でティアもそっとほくそ笑んでいた。予期せぬ形でザオ遺跡に行けるようになったことに。
「ではここで僕は・・・っと、失礼・・・」
「・・・んだよ・・・」
その人物は話が済み場を離れようとして、ルークの体へとぶつかった。頭を下げその人物が立ち去っていく姿をルークは悪態をついて見つめる。握った拳の中に紙を潜ませながら・・・






・・・その後やはりザオ遺跡に行くことになり改めて少しの間用意を進めるため、時間を取ることになった。その中でルークは一人誰にも見られないよう建物の陰に隠れ、握り締めた紙を開いていく。
(・・・僕も導師がさらわれるような事態になるとは思っていませんでしたが、ルークさんは導師の方に向かってください。アクゼリュスはこちらでなんとかしますので・・・か。多分ジェイはこっちの様子を伺ってイオンの行方を俺が切り出せないことに四苦八苦してるから、それを見越して姿を見せたんだろうな・・・)
その紙にそっと目を通しながらルークはさっきのフードの人物・・・声色が明らかにジェイだった為にジェイとすぐに分かり、このような行動を取ったのだと見当をつける。こちらの為に動いてくれたのだと。
(・・・こうまで段取りを取ってくれたんだ。ちゃんとイオンを救出しないとな・・・!)
そしてその紙をポケットに入れ、意気を新たにルークは出発せんと集合場所へと向かう・・・






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