終わりの始まりは変革に染まる始まり

・・・そんなティアの内心だがモースはそれを悟ることなく話を進めていき、謁見の為にルーク達がその場に来るまでグチグチとティアに色々と言っていた。それで前のようティア達も一緒に謁見の間に向かう訳だが・・・
(何かモースとティアの表情が違うよな・・・モースは不機嫌だってのはすぐに分かるけど、それ以上にティアの顔が何て言うか・・・冷たいって言うか、感情が見えない感じがする・・・事実が明らかになったんなら表情に変化は出てもモースはおかしくはないと思うけど、ティアはモースと一緒の時にこんな表情をするのか・・・?)
ルークは内心首を傾げていた。その以前との表情の差異に・・・










・・・そのような状況で謁見の間に入ったものの以前のように話自体は進んでいき、ナタリアがインゴベルトに自分もアクゼリュスにと言い出した後にルークはヴァンを迎えに行くように言われ一人謁見の間を出て、牢屋に向かった。



「・・・来たか、ルークよ」
「はい・・・師匠・・・っ!」
「・・・どうした?何か辛そうだが・・・」
そして牢屋につきヴァンに会った訳だが早々に苦悶の表情を浮かべるルークに何事かを問う。
「ちょっといきなり腹が痛くなって・・・早く、早く上に行きたいんです・・・!」
「・・・分かった。私は先に城を出るからゆっくり調子を整えてくるといい」
返ってきた返答は鬼気迫るといった様子で腹を押さえながらの物で、ヴァンも流石にそこまで引き止めて話をするような気持ちになれなかったようで一言残し先に上へと向かう。
(やっぱかっこわりぃ・・・けど今の俺が師匠の話を違和感なく流す方法なんてそんな他になかったんだよな・・・)
ルークはその後をまだ辛そうにしながら付いていき、内心でみっともないと思いながらも成功だと感じていた。
(後はナタリアが来て俺がそれを断りゃ・・・)
「・・・ルーク!」
「(来た・・・!)んだよ、っつーかちょっとどいてくれ・・・急がないとまじーんだ・・・!」
「あ、ごめんなさい・・・」
演技を止めず階段を上りきった時に今来た様子のナタリアから声をかけられるが、ちょうどいいとそのまま焦りを浮かべるただ事ではないルークの様子にナタリアは身を横に寄せ急ぐその後ろ姿を見送る。






・・・それで数分後、探し回ったという体でトイレに駆け込んで時間を潰したルークがそこから出るとナタリアが腕組みをしながら待っていた。
「・・・んだよ、何か用か?」
「用かではないですわ。私も連れていってください、ルーク」
「んで連れてかなきゃなんねぇんだよ。叔父上はダメだっつったろ」
「だから貴方が私も一緒に連れていくと言ってくれればいいではないですか!」
「俺も一々お前を連れていく気はねーっつーの」
「ルーク・・・!」
「あ、おい。ちょっとお前、こっちこいよ」
「は・・・な、何でしょうか?」
ナタリアから口に出されたのは案の定自分も連れていけという要望だが、ルークは全く取り合う気を見せないばかりか噴火しかけそうな様子に近くにいた兵士にさっと声をかける。
「今見た通りナタリアは俺に付いていくつってんだが、叔父上も俺も連れていく気はねーんだ。だからお前の方から叔父上でも誰でもいいから取り成して、ナタリアを城の中に置いておくようにするように言ってこい。なんならお前がナタリアを叔父上の所に連れてってくれてもいいぞ」
「っ、はっ!ただちにインゴベルト陛下に報告してまいります!」
「ちょっ、貴方・・・!」
少しどもっていた兵士だがルークから出されていく言葉にすぐに敬礼を返し、ナタリアの制止など聞かず場を急いで後にしていく。
「っ・・・ルーク、そこまでしないでもよろしいでしょう!」
「そこまでしなきゃお前が止まらないって思ったからあぁしたんだってーの。本当に俺達に付いていきたいんなら叔父上を説得してからにしろよ。じゃねーと俺は連れてかねーぞ」
「くっ・・・!」
追いかけることも出来ずにいたナタリアはルークに向き直り怒りをあらわにするわけだが、全く応えた様子もなく許可を取ってからこいと手を追い払うようヒラヒラ振る姿に悔しそうに歯を噛む。
(これでいいのかは本当に分からないけど、とりあえずナタリアを連れていかなきゃならない状況はなくなるな・・・)
そんな中で内心ルークは成功だとホッとしていた。おざなりな態度とは裏腹に・・・









3/22ページ
スキ