終わりの始まりは変革に染まる始まり

・・・ティアが歪んだ想いに身を焦がしていて、その想いをアドリビトムの面々は知っているがルークは気付かずにいる。そんな状況の中で一夜が過ぎた。






(・・・もうちょいしたらメイドが呼びに来るな・・・)
自分の部屋の中、前より早めに起きたルークは窓の外をジッと眺めながら考え事にふけっていた。ルークがそうしている理由は早く起きたのもあるが、また別にある。それは・・・
(・・・どうしようかな、ナタリアは・・・出来れば連れていかない方がいいんだよな。今後の事を考えるとナタリアにとって辛いことばかりになると思うし・・・)
・・・そう、ナタリアの事だ。
ルークは苦い想いを覚えながらどうするべきかの考えを巡らせていく。



・・・ナタリアに関しては前の旅からの経験でアクゼリュスに付いていくとなればいくつも辛いことが起こり得るとルークは感じていた。本物の王女ではないと知らされること、ラルゴと実の親子であることが明らかになること、そのラルゴと殺しあうことになること、そしてアッシュが死ぬということ・・・これら全てをそのままトレースするつもりはルークにもないが、少なくともアクゼリュスに行けば偽物であることを明らかにされる可能性は高いと見ていた。

出来ることならルークはそんな事になってほしくはないと思っているが、ナタリアの性格を考えれば付いていくと言い出すのは分かりきった事とも思っている・・・だからこそどうしようかとルークは考えていた。



(本当の事を知る事が本当に幸せになるなんて限らないってのはよくわかってるし、ナタリアも辛い想いをしたっていうのは俺も見てきた・・・ナタリアが辛くないようにって事を考えると連れていかない方がいいんだけど、そうなるとラルゴの事をどうするかなんだよな・・・ラルゴも覚悟の上で神託の盾に入ってるのはのは分かってるんだけど、一応は最期には二人ともわかりあえたっていうか親子としての顔になれたのを見たからな・・・どうしよう、本当に・・・)
そしてそう考える理由はナタリアにだけじゃなく、ナタリアの本当の親であるラルゴにもある・・・会わせるべきか会わせないべきか、ナタリアがルーク達と共に行くかどうかで二人の命運に左右されかねない状況にあるために。そしてそれを自分が勝手に決めていいものかと考えた為に。
(・・・あぁ、くそっ・・・どっちがナタリアやラルゴの為になるのかなんて分かんないけど、俺がどうするかってのは決めなきゃなんないんだし・・・ならせめて俺はちょっとでもナタリアが負担にならないようにバチカルに残るようにしよう・・・これが正解かは分からないけど、少なくとも今の俺がナタリアの同行を素直に許す事はないしあんまり辛いことはないほうがいいと思うしな・・・だから師匠からの話は出来るだけ回避するように動こう・・・)
それで苦心の末にルークが出した結論は辛いことは避けさせようというもので、どうにか動こうと静かに頷く。












・・・ルークが一人決心を決める一方、ティアは城の中でモースと顔を向き合わせていた。



「・・・いいな?貴様に残されたチャンスはアクゼリュスで役割を果たすことだけだぞ」
「・・・はい、分かっています」
以前のように二人で内密に会話を交わす二人だがモースの声には険以外なく、ティアもうつむきながら小さく声を上げる。端から見ればハッキリと二人の関係は険悪そのものと言えた・・・特にティアを見るモースの嫌悪に満ちた視線は。
(・・・終わってくれないかしら、もう・・・)
その中でティアが下に向けた顔はハッキリとうんざりしていると書いてあった。心中同様・・・この辺りはティアの中のモースに対する信頼が昨日で一気に裏切られた上に露骨に今も嫌っていることからになるのだろうが、ここまで尊敬していた人物からの話を蔑ろに出来るのだからもうモースに見切りをつけていることの証明であった。それが同時に自分のせいだというのがほとんどだということに目を向けないままでいることの証明でも・・・










2/22ページ
スキ