徐々に近付く変革すべき時

(モース様は私を見捨てた・・・あの時兄さんは私を助けようとしてくれたけど、それはあくまで私の事を妹として見て扱ってくれたから・・・そこにモース様の意志はない・・・)
・・・城から出た宿の一室にて、ティアはベッドに腰掛けながらモースの思考について考える。だが明らかになったモースの本音と自分の理想のギャップに表情に窓からかかる月の明かりがかかったのもあいまり、酷く暗く影が落ちていた。
(・・・ただ、兄さんも私を助けようとはしてくれたけど、私が妹と言うだけでそれは私の意志に従った物ではないし兄さんの企みは放っておける物ではない・・・となれば私が一緒にいるべきなのはやっぱりガイ達、それにルークだけ・・・となれば・・・)
「ルーク・・・絶対貴方は私が導いてみせるわ・・・人の事をちゃんと見れて、人の為に動ける人間として・・・!」
それでも考えを巡らせるティアはヴァンに対する意識を切り捨てながら、ルークへの歪んだ想いをほの暗い笑みを浮かべながら強く口にする・・・当人の気持ちなど全く考える事もなく・・・















「・・・あら、戻ってきたのねすず」
「はい、一通り回ってきました。ただ少しティアさんの様子も伺ってきたのですが・・・少々情緒不安定になっているようです」
「情緒不安定?」
・・・少し時間は過ぎてアドリビトム、それも女性陣が集まる宿の部屋の中。
入室してきたすずにジュディスが迎え入れの言葉をかけるのだが、少し苦々しい表情を浮かべる様子にナナリーが首を傾げる。
「・・・先程大詠師との会話についてお話しましたが、その事でなのかティアさんは悩んでいたようでした。そこでティアさんは突然表情が変わり、ルークさんを導くと言ってましたが・・・正直、あの狂気を孕んだ表情は何かに取り憑かれたようにしか見えませんでした」
「狂気・・・?」
「おそらく大詠師に直接否定をされたことが影響しているのだとは思いますが、理由はどうあれハッキリと名前の出てきたルークさんにティアさんが何かをしようとするのは間違いないと思います。それもルークさんの気持ちは二の次として、自分の思うようにルークさんをどうにかしようとするのは・・・」
「・・・すずちゃんが見たものはそれだけの物ということなんでしょうか・・・」
すずはその時の事を語るのだが明らかに今までと一線を画するティアの様子に、アニーを始めとして場にいた女性陣の表情が一人を除いて冷や汗気味に緊迫する。
「・・・ならそういった事態にならないようにすればいいだけの事よ」
「ジュディスさん・・・」
「単純なようだけれどそれでいいと思うわ。勿論ルークもそう簡単に流されるような人ではないとは思うけれど、こちらがその気持ちを知っている以上こちらが対応する・・・それが彼のためにもなると思うわ。少なくとも私はね」
「・・・そうだね、私もそれでいいと思うよ」
その一人とはジュディスで毅然としながらも余裕を浮かべた笑みでこれからの意志を示す姿に、ナナリーも感化したようで笑顔を浮かべて頷く。
「じゃあ私達もそうしようか・・・そんなことを聞いちゃルークの事を放っちゃおけないしね」
「はい、そうですね」
つられてしいなも皆を見渡すよう同意を促し、フィリアの声と共に皆頷いた。















始まりとはいいことだけでなく悪いことにも存在するもの



一人の道は交わらないこともあり交わることもあるもの



新たな始まりは告げる、人の道と道の繋がりによる戦いを



next story








15/16ページ
スキ